今回から6回にわたって「アナロジー思考」について解説します。いまビジネス界で(あるいはそれ以外の世界でも)求められているのは、物事をいままでの延長戦上だけで考える(例えば「昨年同様に」「前回同様に」という枕詞を多用して)だけではなく、不連続な変化を起こすためのアイデアです。それは世界や日本の置かれた環境そのものがこれまでの連続で考えているだけではうまくいかずに「不連続」なことを考える必要が出て来ているからではないでしょうか。
ところが「不連続に考える」というのは普通の人にとってはとても難しいことだと思います。基本的に人間はこれまでにやってきた経験や培った知識をベースに考えるからです。それでは、「ひらめきの天才」でなくても新しい発想をするにはどうすればよいか?アナロジー思考はそのための一つのヒントになるのではないかと思います。
発想力豊かな人というのは生まれつきの素養があるのは間違いないと思いますが、方法論の習得や訓練によっても「伸び代」は必ずあるはずです。人材育成担当の皆さんの立場から見ても何かの参考になるのではないかと思います。
「何か斬新なアイデアはないのか?」
こんなチャレンジが経営幹部や上司から降ってくることは日常よくあることではないかと思います。でも突然「斬新なアイデア」と言われてもどこから考えたら良いのかわからないというのが普通の人の反応ではないかと思います。
発想法の世界でよく言われることですが、実は新しいアイデアというのもほとんどのものは既存のものの組み合わせでしかないのです。ですから、いかにその「パーツ」をどこかから選んできてうまく組み合わせることで十分新しいアイデアは生まれます。アナロジー思考はこの2つの要素の前半、つまり「借りてくる」やり方の一つです。
ここまで読んだ皆さんは「借りてくる」っていうことは要は他人(社)のアイデアを「パクる」ことではないかと思われた方もいると思います。それは半分は正しいのですが、残りの半分は正しくありません。それは「借り方」にも様々なレベルがあるからです。
同様のビジネスをやっている競合他社や自社で昔やったことを「借りてくる」のであればあまり斬新なアイデアとはいえないでしょうし、何より競合のアイデアを無節操に「借りて」くれば下手すれば特許侵害等になってしまうこともあるでしょう。したがってなるべく「遠い世界」(例えば他業界やビジネス以外のスポーツや古典芸能の世界、あるいは動物の世界等)から借りてくることがポイントになります。
アナロジー思考とは日本語で言えば「類推」つまり類似のものから推し量るという意味です。「類似」という言葉を補足すれば、普通にしていると簡単に気づけないような「遠い世界」との類似性を探すことが重要なポイントになります。
次回は後半で言及した「遠くから借りてくる」とはどういうことか、そのために何に着目すればよいかについてお話したいと思います。