創考喜楽

ことわざ科学館

目は口ほどに物をいう

It means... 目の動きや目つきは言葉と同等に気持ちが伝わるということ。

目は表情のかなめ

 

人間の表情は目で決まる。ためしに目を布で隠してみてほしい。たちまち、びっくりするくらいに表情が分からなくなる。布でなく、濃い黒色のサングラスをかけても、本人の目の動きや表情が分からず、見ている方は非常に不安になる。

 

隠し撮りした写真を公表するような場合に、目を塗りつぶすこともある。これは本人の人格を重視し、また肖像権にふれないようにするための手段だが、これだけのことで誰だかまったくわからなくなる。なんといっても、人間の心理状態が最もよく表れるのは顔であり、顔の中では目が一番なのだ。

 

一方、口も人間の意志を表すが、じっと動かない口から得られる情報は少ない。かえって口や鼻をマスクなどでおおうと、目の表情が余計にいきいきとするようになる。もっとも口、つまりくちびるも、ひとたび動けば目と等しく雄弁になる。声を出せばなおのこと、出さなくても案外その内容を読み取れるものである。

 

くちびるの動きから言葉を読み取る方法は読唇術と呼ばれ、これはかなり実用化されている。たとえば耳や口の不自由な人は、手話とともに、相手のくちびるをかなりの精度と勘で読み取る。また、プロ野球をテレビで見ていると、監督が球審にピッチャー交代を告げるシーンでは、候補のピッチャーの範囲がわれわれ見ている方にも分かっているせいか、くちびるの動きだけでその名前がはっきりと分かる。さらに、マウンドでピッチャーがキャッチャーと打ち合わせるシーンでも、相手チームに気づかれぬように口もとを隠す場合も多い。

 

それにしても、目の表情は素晴らしい。目つきで気持ちが分かる。特に男女の間では恋人同士でも夫婦同士でも、言葉に出さなくてもよく分かるものだ。秋波、つまり流し目、色目のたぐいは文学にもよく登場する。

 

視線入力

 

ところで、そんな秋波の機械版が、1990年代に発売されたキャノンの一眼レフカメラに搭載された「視線入力」だ。このカメラでは、撮影者の視線に応じて、フォーカス調節を自動的に行ってくれる。ファインダーの内部にある赤外線発行ダイオードからの赤外線を、目の網膜で反射させ、それをCCD(電荷結合素子)で受けるというものである。

 

ファインダー内に水平に数個のフォーカスポイントを設け、任意のポイントを見つめることにより、自動的にそのポイントに焦点が合うしくみで、他のカメラのようなフォーカスロックの操作が不要である。

 

これは、まさに「目でものを言い」、「目で指示をし、コントロールしている」わけで、こんな視線入力が広く進歩すれば、家電やパソコンもキーボードの操作は必要でなくなり、リモコンやマウスの操作とともに、目で使えるようになるかもしれない。