創考喜楽

ことわざ科学館

鵜の目、鷹の目

It means... 熱心に物を探し求めている様子や目つきのこと。

目の構造と見え方

 

このことわざは、鵜や鷹が獲物を狙うときの鋭い目つきになぞらえて、人間の真剣さを表現している。では、どちらも人が考えるように視力がよいのだろうか。答えは「イエス」だが、物を見る場合の条件がかなり違う。

 

たしかに鵜は、鳥類の中でも非常に視力がよい。人間の場合、普通は正視の人でも水中にもぐると強度の遠視となり、物がぼんやりとしか見えなくなる。水の中では光の屈折率が変わるからである。けれども鵜は、水面上で見つけた魚を水面下で上手にとらえる。これはなぜか。鵜は、目のレンズ(水晶体)の焦点調節能力が大きくて、人間の5倍前後の調節能力があるといわれている。そのため、水面上から魚を見つける場合でも、水面下で魚を追いかける場合でも、どちらもよく見えるのである。

 

一方、見るからに視力がよさそうな鷹の目は、文字通り800m離れた先のトンボも見えるといわれている。人間なら、100mも離れると、もはやトンボは見えない。鷹の目がこんなにすぐれているのは、望遠鏡のような構造のおかげだ。遠くのものが拡大されて眼底に映るのである。

 

猫の目センサー

 

次に、同じ“目“に関することわざで“猫の目“をとりあげてみたい。変化しやすい現象のたとえに使われることわざで、「猫の目のようだ」ともいう。

猫の目の瞳孔は、外界の明るさに実に敏感に反応し、目まぐるしく形を変える。周囲が真っ暗のときは、ほとんど円形に開き、薄暗いときはタテに長い楕円形になり、明るいときはタテ長の針のようになる。このような瞳孔の形の目まぐるしい変化から、どれが本当の形か分からないことが多いので、そのように使われることとなった。しかも、この場合の変化はよい意味でなく、むしろ浮気心や春先の天候の変化など、好ましくない場合に使われることが多い。

こんな猫の目にくらべ、人間の目では、光量に応じて、瞳孔が絶えず変化するものの、円の大きさが変わるだけで、形は変わらない。しかし、眼底検査のために点眼をして瞳孔を開く(散瞳する)と、びっくりするくらいに瞳が大きいことに気づく。まさにまん丸である。こんなに大きい瞳が、平常は実に目まぐるしく直径を変える‥‥目のセンサーとしての働きには本当に感心させられる。