伊達の薄着
It means... 厚着して着ぶくれるのが格好悪いといって、寒くても我慢して薄着で過ごすこと
薄着の功罪
着ぶくれの不格好をいやがって、薄着をすることで「伊達の素足」ともいう。たしかに今日、伊達の薄着をきめ込む人は多い。見栄っ張りで、かっこよさを気にする人(伊達者)が冬の寒い日でもムリをして薄着をする。もともと女性は薄着だが、今日ではそれに輪をかけたように、下着メーカーがファッション性を強調する。
たしかに、最近は暖房が普及し、オフィスも電車の中も暖かくなった。電力会社やガス会社の地域暖房も広がっている。さらに地球の温暖化もあってか、都会では冬の寒さも昔ほど厳しくはないため、厚手のオーバーコートを着る人は少ない。真冬でも、レインコートやスプリングコートのたぐいで間に合わないこともない。だが、身軽なのはいいが、“伊達の薄着”でカゼをこじらせて、体が資本の現代人がサバイバルを貫けないようでは困る。
まあ、オーバーコートの話は別にしても、下着一つで保温効果が大きく変わるということはぜひ知っておいていただきたい。では保温はどんな仕組みでできているのか。それが科学的に納得できれば、かっこよさと身軽さの両方の意味から薄着志向も満足させながら、保温と妥協が図れるだろう。
保温の仕組み
さて、下着の機能は、保温、汗を吸う、皮膚の汚れを取る、上に着る衣服の肌触りをよくするの四つである。この中でも、冬場は保温の効果が大きい。ある実験によると、下着をつけない人の体温の深部温度(直腸の温度)の下がり方は下着をつけた人よりもずっと大きかったという。下着の暖かさのもとは、肌と下着の間や、下着と衣服の間の空気層である。空気そのものは、もともと熱を非常に伝えにくいので、同じ薄着でも、この空気層を動かないように閉じ込めれば保温効果は高まる。
空気層を動かさないためには、下着の繊維の中や、繊維同士の間の隙間を細かく分けるとよい。薄い下着でも良いから2枚を重ね着し、空気層を分割するのがよい。このことから考えると、高価な毛皮のコートでも表と裏を反対にして着るほうが保温の面では理にかなっている。サテンなどのすべすべした裏地ではなく、空気の入り込む細かい隙間の多い毛皮の面を体の側にして空気層を閉じ込めるのだ。誇り高いレディにとっては耐えられないことだろうが、理屈からいえば、そうなる。
カッターシャツの上に毛糸のセーターを着るのも同様で、本当はカッターシャツの内側で、下着のすぐ上にセーターを着る方がよい。また、これはあまり格好良くないかもしれないが、旅行中の列車内などで寒いときは、スーツの下に新聞紙を入れると、そこに臨時の空気層を作る事ができる。このときは、車内で体の動きが少ないので、紙一枚で意外な保温効果を発揮する。
さて、最後になったが、下着の素材についても簡単に触れておきたい。昔から下着の素材として人気のある木綿は、他の繊維に比べて吸収性と肌ざわりが断然すぐれている。しかし吸湿性が高いと、吸った汗が抜けにくく、寒いシーズンでは体を冷やす原因になる。こう考えると、冬に汗をかく心配のある場合は、水をはじきやすいウールの方がよいことになる。撥水性があると、汗は繊維にしみこまず流れるので、空気層の効果が上がることになる。