創考喜楽

ことわざ科学館

箸にも棒にもかからない

It means... あまりにもひどすぎて、手のつけようが無いこと。

レオロジー/流動学

 

どうにもこうにも手がつけられず、処理しようのないことだ。「酢でもこんにゃくでも」とも言うように、すっぱすぎる食べ物は、口がゆがんでしまってどうにもならない。こんにゃくも、昔の人は栄養があるのかないのか分からなかったのだろう。

 

また、「酢みそでも食えぬ」という。どんなにまずい料理でもピリッと酢と辛子の効いた酢みそを使うと何とか食べられるはずだが、それでものどが通らないくらいに何ともならない様子である。ところで、現実に文字通り「箸にも棒にもかからない」くらいに手に負えない材料を研究する科学がある。

 

「レオロジー(Rheology)」がそれである。レオロジーは「流動学」と訳され、物質の変形と波動を扱う科学である。レオロジーの対象には食品も多い。すぐ思いつくのは、水あめやコンデンスミルク、蜂蜜で、このように、固体のようでいて、ジワーッと動くものだ。さらにバターやマーガリンやチーズのように、常温では固体だが、少し加熱すると流動するようになるものも、レオロジーの対象になる。

 

サラダにかけるドレッシング、トンカツソース、カレーのルーも同様だ。このような食品は、レオロジーのデータによって、かなり違った味になる。これまでは、測定や官能検査による特性値が既知の理論に合わないことが多く、いろいろ問題になってきた。

 

レオロジーと食品加工

 

その理由の一つは、多くの食品材料に微妙に気泡が含まれていることである。加工し、かきまぜる間に気泡が入り、それで体積が増え、商品としての見映えと風味が決まる。わざと気泡を混入する操作の場合、気泡の直径をいくらにするか、また混入空気量はどのくらいに保つかなども、食品の品質に密接な関係があるが、まだはっきりとは分からず、今日、盛んに研究されている。

 

たとえば、お茶を立てるときの竹製の茶筅の使い方には、かなりの熟練がいるものだ。茶筅を動かす速さや角度と時間によって、立てたお茶の舌触りと味に大きな差ができる。泡を立て終わって、茶筅をお茶から静かに抜き取るタイミングのつかみ方も実にむずかしい。

 

これに似たことが食品加工にもある。クリームやマヨネーズなどは微細な気泡混入により仕上がりの度合いに差ができるので、かなりのテクニックが求められる。これに使うかきまぜ機には竹製の茶筅のような微妙さはなく、金属製の羽根をモーターで回転させてかきまぜるのだが、それでもかきまぜ終了のタイミングのつかみ方が製品の品質に大きな影響を与える。

 

クリスマスケーキの台などスポンジケーキの断面を見ても気泡をめぐる工夫の跡がよく分かる。気泡の分散した材料は圧縮しにくいと思われるものであっても、実際に加工すると、ひどく圧縮しやすかったり、弾力性のある材料になったりし、これまではその理由をつかめないことが多かった。だが、最近はレオロジーの発達で、微妙な”ゴムのような”性質をもつかめるようになり、食品加工に役立っている。