たんぺいきゅう・・・・・ |
「後漢書」の光武紀に「賊急追し、短兵接す」とあります。
出典をそのまま読めば「賊が急進してきて、短い武器で迫ってきた」となりましょう。
短兵は、短い武器、短刀、槍の短いものをさします。この文章は光武帝の勇戦ぶりを記したものですが、解説書によっては反対に解している場合も見られます。一部の書では、光武帝の方が、「賊を追うこと急にして、短兵接す」として、賊に迫ったことになっています。いずれにしても緊迫した情況を表現していることには変わりありません。
わが国の史家で詩人の頼山陽が「短兵、急に接す」と記したため、私どもの平素の言葉のなかに「短兵急」という熟語となって残っているのです。
ちなみに、「寸鉄人を殺す」の寸鉄は、短い武器、つまり、短刀やナイフのような刃物類を言います。これは実際に人を殺す意味ではなく、短い言葉を発して、人の急所を突いてしまうことを言います。鋭い言葉で、人の死命を制することを言っているのです。
「短兵」や「寸鉄」が活躍するというのは、どのような場面でしょうか。長大な刀や、長い槍の方が強力な武器であるのは違いなく、剛弓や大砲は更に威力があります。
しかし、接近戦や家屋の内部などでは短い武器しか役に立ちません。
「寸鉄」とは、長い説明や詳しい理論などが述べられるのではなく、わずか数語で、人を刺すような威力がなければなりません。それが、ぴたりと人の急所を突いていると、絶大な効果が生まれます。
「A君は、歌がうまいね」といって褒めるのと「A君は歌はうまいね」と評したのでは大変な違いがあります。後者には、「歌はうまいが、仕事はダメ」というニュアンスがうかがえるからです。
仮に幹部から「もう君には頼まない」と言われれば、これはサラリーマンにとっては、死刑の宣告のようなものです。警句、訓言も、その場合に適切なものでなければ、意味がなく、タイミングが絶妙なほど効果が大きいのです。
また、「短兵」「寸鉄」がビジネス世界で活躍するケースとしては「小回りがきく」ということが挙げられます。
大企業や、実力のある団体がこなし切れないような処理にキメ細かく対応するためには、それ相応の機能を備えた組織が必要です。
緊急な対応を現場ですぐ対処するためには「小回りがきくこと」がどうしても必要であり、小規模の組織である短兵の活躍する余地は多いといえます。