「勇敢」な行動はもちろん評価されますが、それがいきすぎて、無謀な行動に走ってしまうと、勇気や積極性として認められず、むしろ結果的に弊害が生れてくるものです。 |
「論語・述而編」に見える、孔子一門の師弟の会話からとられた言葉です。
子路は孔門十哲の一人で、正義感のある、また勇気のある人物として知られていました。
また、義埋堅い人物として定評があり、その点を孔子に褒めてもらいたかったので「先生がもし大事を指揮されるとしたら、どのような人物と一緒に行動をとられますか」と質問をもちかけたのでした。
すると孔子は「虎を素手で捕まえようとしたり、黄河を歩いて渡ろうとするような乱暴な人とは行動を共にしたいとは思いません。むしろ、どちらかというと、事に臨んでは、慎重でよく計画を練るような人物と行動を共にします」と答えたのでした。
孔子は、もちろん子路の良い点は十分に認識していて、第三者には本人の美点を語っていたのですが、平素の行動はやや粗野なところがあり、それを心配していた孔子が、本人の前で、厳しく注意したものと解してよいでしょう。
「猪突猛進」「無鉄砲」「むこう見ず」などと評される人が、部下に配属されたときの参考として、この熟語を取り上げてみました。
このタイプの人は経済の高度成長期にモーレツ型の社員としてもてはやされた積極タイプです。現在でもその人びとの特徴を生かして使うようにすれば、セールスや拡販で貴重な人材であると考えます。
目標が決まればトコトンまで頑張りますし、「猪突猛進」といわれるように直線的に走る特性があり、まわりくどい理屈は好みません。それだけに上手に説得すれば、十分に上司の意のおもむくように大活躍するのです。
孔子は、子路を可愛がっていたのですが、その行動に危倶をもつあまりに、厳しく注意しすぎたようです。この元気のいい人びとは、頭ごなしに叱ってもあまりききめはありませんし、むしろ反抗してくることが多いようです。
子路も任官し活躍した時期もあったのですが、結局は積極すぎ戦死してしまっています。
勇気があり、また正義感のあるところを利用して、うまく褒めながら、しかも監督の目の届くところで活躍させるようにしたらいかがでしょう。
「深慮遠謀」で「緻密周到」であることも大切です。ただし、慎重すぎて行動がともなわないのではその長所は生きてこないでしょう。この2つのタイプをうまくかみ合わせて、「組み合わせの妙」を人事面で発揮したいものです。