駆けつけ三杯
It means... 飲みの席に遅れて来た物は、言い訳は必要なく罰としてお酒を 三杯飲まされるという事
気持ちよく酔える酒の量
酒の席での非科学的で悪い習慣は、勢いだけの“一気飲み”。昔風に言えば、遅れて来た人への「駆けつけ三杯」だ。
酒の席に遅れて来るくらいだから、仕事や交通ラッシュで心身ともにストレスが溜まってるし、空腹でもある。本人は遅れて来たという弱みがあり、少しでも早く皆に追いつこうとするので、つい、このペナルティ(罰)を受け入れる。
そんな訳で、急性アルコール中毒で、その場にぶっ倒れることも少なくない。したがって、駆け付けてきた本人は、会場に入って挨拶もそこそこに酒を勧められる前に、少しでも食べ物を口にするぐらいの用心が必要である。
専門医によると、気持ちよく酔える程度の酒の量は平均して、成人男性で日本酒なら1合(約0.2ℓ)で、ビールなら大瓶1本、ウィスキーではシングルで1杯だという。この程度の量なら、血中のアルコール濃度は0.07%ぐらいで、ほろ酔い加減である。
もちろん、これも人によってまちまちなので、日ごろ、自分の適量をつかんでおく必要がある。いずれにしても、周囲の人々が、人それぞれであるはずのペースや量を無視して飲酒を強制するのは悪い習慣だとわきまえ、せっかくの華やいだ会場の雰囲気を、台無しにすることのないように気を付けたいものだ。
“3”の魅力
それにしても、「駆けつけ三杯」というが、なぜ2杯や4杯ではないのだろうか。これについては、やはり世の中で広く使われる“3”という数字の“魅力”や“威力”、それに必要最小限の簡潔な数という意味に注目すべきだろう。世の中には“3”の例が実に多い。“3”は、カメラの三脚でもわかる通り、丁度良い安定した数である。四脚なら、4本の足を全部、地面にくっつけるために長さの調節が要るし、二脚なら倒れてしまう。ワルツの4分の3拍子は、適度にリズミカルであり、「三三七拍子」も感じが良い。結婚式の三三九度も、似た感じだ。万歳三唱は、3回だからこそ意味がある。2回では少なすぎ、4回では、くどくなる。
そういえば、酒以外の“三杯”の心配りの例として古来有名なのが、石田三成の茶の出し方だ。三成がまだ寺の坊主であったとき、近江の観音寺(今の滋賀県、長浜市内)を訪ねた秀吉に対して三杯のお茶を出し、それが低温、中温、高温の順序だったという伝説がある。確かに話半分に聞いても、その気配り、心配りは絶妙で、十分に評価できる。
喉の渇きを効果的に抑えるのには、この順序がピッタリ合理的だといえる。しかも、この場合も、“三杯”であったのがよく、四杯では量が多すぎて逆効果だったかもしれない。「駆けつけ三杯」という言い古された言葉から、このような“3の魅力”を汲み取り、日常のくらしに役立てることを、ぜひオススメしたい。例えば、車の運転中でも、常に「三つのチェック」を繰り返したい。「前方監視、四周警戒、全ての兆候の注意」の3点セットである。これも三つだからこそ、常にリズムよくチェックを繰り返せるわけだ。