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第47回:イノベーションとムチャクチャを分けるのは:イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ
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イノベーションという言葉は、今ではすっかりバズワードになり、いろいろな場面で、いろいろな意味で使われています。経営学においてイノベーションを分析しているので、よく「そもそもイノベーションとは何なのですか?」と聞かれることがあります。そこでは常に、「経済的な価値を生み出す新しいモノゴトです」と答えています。これが僕たち(経営学におけるイノベーション研究をしている人たち)がよく使う定義なのです。
ここからすれば、ノーベル賞を受賞し大きな話題となっているiPS細胞はイノベーションではないということになります。現段階ではまだiPS細胞はビジネスになっていないため、経済的な価値は生み出されていません。そのため、大きな科学的なブレークスルーではあるのですが、「まだ」イノベーションではないのです。もちろん、将来のイノベーションのとても重要なタネです。これをどのように産業化して、大きな経済的な価値を生み出していくかは、日本の企業にとって大きな課題です。
ただ、今月のテーマはここではありません。「イノベーション」と「ムチャクチャ」についてです。この2つの間の差は何なのでしょう。ムチャクチャは、時として「経済的な価値を生み出す新しいモノゴト」になることもあります。また、イノベーションを見てみると、セレンディピティのような偶然性の要素が大きな重要性を占めているケースが多いのです。
これを考えさせてくれるのが、バンクシー監督のドキュメンタリー映画の「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」です。バンクシーは、イギリスのグラフィティアーティストです。パレスチナの壁に書いた絵や、MoMAやテート・ブリテンなどに自分の作品を勝手に飾るなどで有名になったアーティストです。
このドキュメンタリーは、イノベーションを考えるにはとても面白い映画です。何がイノベーションで、何がムチャクチャなのかがすっかり分からなくなる。それまで最先鋭を行っていた人たちでも、あっという間に「古典」や「体制側」になってしまうのが分かります。また、「高い技術力」や「既存のやり方」というものがいかにあっという間に陳腐化してしまうかもよくわかります。しかも、「え? これ、ムチャクチャじゃないの?」とも思えるものが大きな価値を生み出したりするのです。
あまり詳しく書くとネタバレになってしまうので、書きません。もうDVDになっているので、未見の方はぜひ。イノベーションとムチャクチャの差を考えてみてください。
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