第29回:動き出したくてギリギリする感覚こそ |
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バングラデシュの首都ダッカから、船で4時間ほどのエクラスプールという農村で僕らのチームが見たのは、歯ブラシを買えない子どもたちでした。貧しくて歯ブラシを買ってもらえない子どもたちは、どんどん虫歯になっていきます。虫歯になると、我慢するか、ペンチで抜くしかありません。
もう一つ、驚いたのが、街のいたるところに散らばるゴミでした。とくにマーケットは汚い。ゴミを集めて回収する人はいるのですが、それでもゴミがあふれているのです。
そこで、一橋や上智、早稲田、慶應の混合チームが考え出したのが、Brush Up Bangladeshというプロジェクトです(何のことだか分からない人は、前回の日記へ)。 |
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▲僕たちのグループが行った歯磨きワークショップの様子です。ものめずらしさもあって、興味津々です。歯を磨くのは、虫歯を治すためだと思っていたりもします。 |
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これは、歯ブラシを買えない人たちに、日本から歯ブラシを送るプロジェクトです。詳細は、プロジェクトのホームページを見てほしいのですが、アイディアとしては、下のようなシンプルなモノです。 |
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■ 出張に行くときには、マイ歯ブラシを持っていって下さい
■ ホテルのアメニティの歯ブラシを、持って帰ってきて下さい
■持って帰ってきた歯ブラシは、会社の回収ボックスに入れて下さい
■回収ボックスに歯ブラシがたまったら、僕らがとりに行きます
■歯ブラシは、エクラスプールに送られます
■エクラスプールで、ゴミを回収してきてくれた人に、歯ブラシをあげます
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これで、No Brush / Many Trash(歯ブラシはなく、ゴミがたくさん)の状況を、Many Brush / No Trash(たくさんの歯ブラシ、ゴミはナシ)に変えいこうというのです。
このプロジェクトはまだ動き出したばかりのもので、この先、どうなるかは分かりません。しかし、このプロジェクトをやろうと決めてから、学生たちは変わりました。「一刻も早く、走り出したい!」という気持ちで一杯なのです。うずうずしているのです。早くホームページを創って、協力してくれる企業を回りたいのです。すぐにでも農村の子どもに歯ブラシを届けたいのです。メンバーの一人は、高校の時からずっと続けてきたバドミントン部まで、やめてしまいました。それまでリーダーシップをイマイチ発揮できなかった学生も、どんどんみんなを引っ張っていきます。とにかく楽しそうなのです。
今回のバングラデシュは、社会人と学生が一緒になって真剣にグラミン銀行と農村の問題を解決しようというものでした。長い間一緒にいるわけですから、当然いろいろなことを話し合います。そこで、学生たちが社会人に聞く質問の中で、一番多かったのが「仕事って楽しいのですか?」でした。
もちろん、働いていれば、楽しいことばかりではないでしょう。そんなことは学生も分かっています。でも、彼らが本当に聞きたいのは、「うずうずしたくなるような楽しい仕事ができるのか」なのです。
最近では、就職難で学生のうちからビジネス・スキルを身につけておくこと、グローバル・リーダーになるためのスキルを獲得することが大切だなどと言われています。学生の不安をあおるようなセミナーも数多くあります。
でも、スキルなどはあまり本質的な問題ではないのです。本当に必要なスキルなら、学生だって、本気で身につけようとします。社会人から一番聞きたいのは、「1分でも早く起きて、職場に行ってやりたい仕事があるか」なのです。それさえ聞かせてくれれば、必要なスキルはいくらでも進んで吸収するはずです。いくら就職難でも、モチベーションは上がるのです。 |
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▲農村(エクラスプール)の様子です。
トタンの小さな小屋に家族がつまって住んでいます。もちろん、冷暖房はありませんから、夏は暑く、冬は寒い。 |
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『第19回:月曜日の朝、オフィスに行く前。どうですか?』でも書きましたが、一刻も早く仕事場に行きたくなるようなエキサイティングな仕事をしているロールモデルが、社会にどんどんでてくれば、もう一度坂の上の雲を目指していけるはずです。動き出したくてギリギリする感覚ありますか? |
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