上海では街に出て感動したことがある。基本的に物価が非常に安いことだ。日本人でも買うようなものははっきり言ってそう安くないが、あらかじめ定価の決まっているものは非常に安い。中国の平均的労働者の月収が月額1万そこそこなので、それは当然のことだろう。
2003年9月現在、1元は15円ほどである。しかし、元の実力は3倍か4倍は軽くあるという印象だった。意図的に中国政府が人民元を低い為替レートに抑えこんでいるのではないかと感じていたら、帰国後、盛んにそういう報道がなされている。現在の中国は変動相場制にはないようだが、おそらく近い将来、人民元はドルや円に対して2倍近いレートになるのは必至だと思う。
街に出ると、マッサージが日本円で500円か1000円ほどで楽しめるが、私も毎日のようにホテル近くの足裏マッサージに通った。なんと日本円で750円(50元)ほどなのだ。日本でもあるような外装の店に入り、椅子に座ると、桶にお湯を入れて足を洗い、1時間ほど丹念にマッサージしてくれる。同行した中川さん、岸畑さんと私の三人で並んでマッサージしてもらっていると、最初に薬の入った油を使わないかと勧められる。これはプラス20元(300円)なのだが、はっきり言ってほとんど差はない。しかし、断っても2回か3回は是非是非と盛んに勧めてくる。
マッサージの人の賃金は不明だが、仮に半分の配分率として1時間300円程度のものである。薬の入った油は、どうも彼らにはインセンティブになっていて、同等以上の配分率のように思える。というのも、油を使いたいというと、彼らはガッツポーズを取ってにっこりと笑うからである。これに対して、断ると、がっかりして本当に残念そうな顔をするので、こちらも気の毒になる。しかし、同じように対価を払っているのに、追加のサービスを勝手に作って、頼まないとがっかりされてもかえってこちらは迷惑だ。それだけ顧客志向をないがしろにするほど成果重視になっているようだ。
中国ではどこの企業も徹底した成果主義になっているそうだ。そのために、仕事のプロセスに無頓着な人が少なくないという。しかし、中間成果には意味がないと思うせいか、報告、連絡、相談をほとんどしない人が多いそうである。日系企業はそのことで戸惑うという声も聞いた。
顧みて今の日本はどうか。中高年世代の日本人サラリーマンは、言い訳めいた報告、あまりに頻繁な連絡、依存的な相談だけをやたらとしてくる人がいる。要するに本人は何もやっていないわけだが、遅刻した理由、決済が下りない理由、仕事が進まない経緯の説明などを延々と繰り返す。そしてしっかりとコミュニケーションを取りましょうと言い出す。そもそも我々のようなコンサルタントは、社内の人間ではないので、できなくてもできてもどうでもいいのだが、できていないこと、進捗のないことを聞いても仕方がない。なので、どうなったかの結論だけ知らせてほしいし、聞いてもいないときは長々しい電話もメールもやっかいなだけである。考えてみれば、こんな仕事の仕方で高い給与がよく払われると感心することがある。
日本人は仕事そのものをしないといけない時期に来ていると感じるのは私だけだろうか。
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