もう25年も前のことだ。初めて米国の土を踏み、西海岸で大学生活を始めて間もなく、隣のアパートに住んでいた学生が彼の実家へ夕食に来ないかと声をかけてくれた。米国人家庭に招待されるのは初めてのことだったから「Thank you」とその場で快諾。米国の本格的家庭料理を味わえるものとその日が来るのを楽しみに待っていたのだが、ある晩突然、彼から招待のキャンセルを言い渡された。「エエー?」思い描いていたご馳走は瞬く間に消え去り、ただ呆気にとられたことを覚えている。後でその理由を聞いたところ、要するに「Remember Pearl Harbor (真珠湾攻撃を思い出せ)!」というやつで、たとえ息子のアパートの隣人であろうと、敵国日本からの人間はご法度ということであった。既に戦後34年という時間が経過していたにもかかわらずだ。