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デザイン思考で世界を変える
第4回 |
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非連続的・破壊的なイノベーションを生み出す方法論のひとつとして、各分野においてデザイン思考が話題になってきたようだ。デザイン思考をこれまでのようなマーケティング流行語に終わらせないためにも、そのメソッドを一つ一つ確実に理解して普及していきたいものだ。さてデザイン思考の実践のためにスタンフォードdスクールが用意しているテキストご紹介の第4回目となる今回は「ユーザーインタビュー」について採り上げる。
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【メソッド:Interview Preparation / インタビューの準備】
■インタビュー準備の重要性
我々がユーザーと共に過ごすことができる時間は貴重だ。だからこそ我々はそこから最大限のものを引き出したいと考える。時にユーザーが見せてくれる自発的でラッキーな偶然に対しては、もちろんあらかじめ十分なスペースを確保するとして、インタビューのための準備は決して疎かにしてはならない。
特に、テスト後のユーザーフォローアップにとって、インタビュー計画は欠かすことができないものだ。当日、用意した質問事項のすべてに対する答えを得ることはできないかもしれないが、ユーザーと確実にエンゲージできるだけのものをあらかじめ抱えて、インタビューに臨むことは決して無駄にならない。
■どのようにインタビューの準備をするのか?
①ブレーンストーム
チームメンバーが考えうる限り多くの質問事項を書き出す。テーマに関してより意味を持った質問にするために、他人のアイデアにどんどん自分のアイデアを重ねていく。
②テーマの整理
グルーピングという方法に似ているが、テーマや大部分の質問が含まれる課題領域を特定する。数多くの質問の中から一つのテーマを特定したら、会話が自然に流れていくようにそれらを順序立てて並べ変える。そうすることによって、インタビューが一貫性を欠いたものになってしまう危険性をあらかじめ避けることができる。
③質問を洗練化する
すべての質問がテーマや話の進み方に沿うようにグルーピング作業を終えたあと、あらためて質問の流れ全体を見直してみると、部分的に会話を中断してしまうような唐突な質問になっていたり、ポイントの外れた質問になっていることに気づけるかもしれない。少し時間をとって、計画の中にたくさんの「なぜ?」や「最後にあなたが~~~した時のことを話してください」といった、ユーザーがそこから何を感じとっていたのかを理解するための隙間も作っておく。
【メソッド:Interview for Empathy / 共感のインタビュー】
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■なぜインタビューするのか
人々の考え方、感情、モチベーションなどをインタビューから理解することによって、彼あるいは彼女のためにどのようなイノベーションを創り出せばいいのか、それを現実に即した形で知るため。人々がどのように選択し、どのような行為にエンゲージするのか、それを理解することによって、彼らのニーズを特定し、そのニーズを満たすためのデザインを考えることができるようになる。
■どのようにインタビューするのか
①なぜ?と尋ねる
質問に対する答えがあらかじめ想像できるような時にも、なぜそうするのか、なぜそのように言うのか質問してみる。彼らの答えが、時にはあなたを驚かせるものになることがある。さらに一つの質問から会話をスタートさせたら、必要なだけ会話を続けることも重要だ。
②質問する際に「普段は」という言葉を用いない
その代わりに、具体的な状況や事象に置き換えて質問するのが良い。たとえば「あなたが最後に~~~したときには」などのような質問の形だ。
③ストーリーへと誘導する
人々の話すストーリーがたとえ本当であっても、あるいは本当でなくても、それは彼らがどのように感じているのか、考えているのかを反映した言葉だ。そこから物語を引き出せるような質問を行おう。
④矛盾するポイントを探せ
人は時に考えていることと、やっていることが一致せず異なっている場合がある。こうした矛盾点の背後に、興味深いインサイトが潜んでいることも少なくない。
⑤非言語情報に着目する
ボディランゲージや感情にも注目すべき。
⑥沈黙を恐れない
会話の中に沈黙が入り込んできた時、インタビュアーは「次の質問をしなければ、、、」と考えがちだが、そのまま沈黙の時間を保ち続けることによって、回答者には発言したことについて再び考えるチャンスが与えられているのだ。時には沈黙の後により深い答えが飛び出てくる可能性もある。
⑦質問への回答を提案しないようにする
回答者が答える前に沈黙してしまうような時にも、こちらから助け船を出さないようにする。人は時に、質問者が期待するような方向に沿って、回答することもある。
⑧質問は中立的に
「ショッピングっていいと思いませんか?」という質問より、「奥さんへのプレゼントを購入することに関して、どう思いますか?」という質問の方が確実に良い。なぜならば、前者と違い、後者の質問には「正しい答え」に対する質問者の意図が入っていないからだ。
⑨二者択一(バイナリー)の質問をしない
バイナリーな質問に対してはイエスかノーの一言で答えられる。我々が必要としているのは、イエスかノーではなく、ストーリーの上に組み上げられた会話なのだ。
⑩質問文の単語は10単語にとどめる
質問文が長すぎると、回答者は質問の意味を見失ってしまう。
⑪質問は一度に一問だけ、一度に一人だけ
質問を複数の人に繰り返すと、一人の回答者の答えが次の回答者の答えに影響してしまうからだ。
⑫記録するための作業を準備
インタビューは二人一組で行うようにする。それが不可能な場合には、ボイスレコーダーを準備すべき。というのも、ユーザーと確実にエンゲージし続けながら記録を取ることは不可能だからだ。
【メソッド:Extreme Users / エクストリームユーザー活用】
■なぜエクストリーム(過激な)ユーザーを活用するのか
優れたデザイナーはユーザーとの関わりによって、彼らのニーズを理解し、彼らの暮らしの中に潜むインサイトを発見する。我々も同様に彼らの問題解決の方法やそのためのフレームワークから、インスピレーションを得ることができる。
あなたがエクストリームユーザーと会話したり彼らを観察する時、彼らのニーズは増幅されたものであり、問題への対処方法はより顕著であることが多い。(ベル曲線の中央に位置しているような)ボリュームゾーンのユーザーを観察していたら発見できなかったかもしれない意味あるニーズを引き出すためにも、エクストリームユーザーの観察が大きな助けとなることも少なくない。そうして得られたエクストリームユーザーにとってのニーズは、より広い層のユーザーにとっても同じような意味を持つニーズである。
■エクストリームユーザーとの関わり方
①誰がエクストリームなのかを明確にする
誰がエクストリームユーザーなのかを明確にするためには、あなたがデザインしようとする課題のどの局面を追求したいのか確定することからスタートしなければならない。デザインしようとするものに幾つの切り口があるのかを数える。たとえば、あなたが食品店のショッピング体験をデザインし直そうとするのであれば、次のようなことを考えなければならない。
*消費者たちはどのように食品を買い集めるのか
*どのような決済手段が用いられているか
*購入の決定はどのように行われるか、などなど。
また食品の買い集め方という局面においては、次のようなプロフェッショナルなショッパーを観察すべきだろう。たとえばリサイクル場でショッピングカートを使用してリサイクルされた素材を拾い集める人(カートは当然過積載だ)、オンラインショッピング企業の倉庫で注文を受けた商品を棚から取り出す人、グローサリーショッピングに子供を連れて行く人、グローサリーストアに行かない人、などなど。
②エンゲージメント
他の一般的なユーザーと同じように、エクストリームユーザーを観察してインタビューする。彼らの問題への対処方法やそれ以外のエクストリームな行動などから、インスピレーションを得たりインサイトを発見できることも少なくない。
③すべてに通じるエクストリームの発見
エクストリームユーザーの観察によってインスピレーションを得たり、ワイルドなアイデアを思いついたりするが、そのなかのどの部分が(実際の対象である)一般ユーザーに響くのかを理解するために、最大限の努力を投じるべきだ。
Hasso Plattner Institute of Design at Stanford University
d.School
The D.SCHOOL BOOTCAMP BOOTLEG
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