OECD(経済協力開発機構)では、現在「国際成人力調査」(PIAAC:ピアック)という「成人力」を測定するための国際比較調査を準備しています。平成23年度に本調査を実施し、平成25年前半に結果が公表されます。日本がこのような調査に参加するのは初めてのことであり、また、国際的にみても、今回のように27もの国が参加した大規模な調査は初めてです。
「成人力」という言葉は皆さんにとって耳慣れないものかと思います。
よく「何をテストするのですか?」という質問を受けますが、「成人力」というのは、職場や日常生活の中で必要となる総合的な力のことを言い、今回の調査では特に課題を見つけて考える力や、知識や情報を活用して課題を解決する力などを指します。
したがって、知識をどの程度持っているかを測定する「テスト」ではありません。
なぜ日本としてこのような調査に参加することが必要なのでしょうか。
日本では、平成21年の15歳から24歳までの完全失業率が9.1%、大学の学部卒業者の就職率が60.8%、就職も進学もしていない卒業者の比率が19.7%と若年層の雇用は極めて厳しい情勢に直面しています(図1及び図2参照)。
このような状況の中、中央教育審議会でも、現在は「学校から社会・職業への移行」が円滑に行われておらず、高校や大学で学生のニーズに十分に対応した職業教育を提供するにはどうしたらよいか、また、社会的・職業的な自立に必要な能力を育成していくにはどうしたらよいかということについて議論がされています。
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◇図1:大学(学部)卒業者の就職者数及び就職率等の推移(平成22年学校基本調査速報) |
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◇図2:労働力人口及び就業者数の推移(平成21年労働力調査より) |
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一方で、少子高齢化に伴い、労働力人口は着実に減少しています。 10年前は6800万人近かった労働力人口は、平成21年には6600万人程度まで減少しています。今後、就労意欲のある女性や高齢者を積極的に採用していくことが重要となってきます。
また、雇用形態も大きく変化してきています。 近年は正規従業員以外の形態で働く若者が増加し、従来のように学校卒業時に就職し、同じ企業で定年まで働くという形態が必ずしも一般的ではなくなってきています。 |
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◇図3:雇用形態の変化(平成19年就業構造調査より) |
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加えて、知識基盤社会においては、日常生活の中で積極的に様々な活動に参加し、安定した生活を送るために必要とされる情報が目まぐるしく変化し、また、日常生活で直面する問題も多様な要素が絡まりあって複雑化しています。情報があふれる中、本当に必要な情報を見つけ、解釈することが求められており、学校卒業後も積極的に学び続ける生涯学習ニーズが高まっています。
残念ながら日本では、大学入学者に占める25歳以上の割合がOECD加盟国中最下位であることに見られるように、まだまだ学校卒業後の生涯学習への参加は、欧米諸国と比較すると十分に進んでいるとはいえません。 |
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◇図4:大学入学者のうち25歳以上の割合(OECD教育データベース等より) |
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さらに、アジアを中心とした海外市場の成長に伴い、日本の企業も海外生産比率が上昇してきており、商品開発も現地のニーズに合ったものとするため、現地法人において、現地の技術者を採用して行うようになってきています。
多くの企業が国籍を問わずに採用を行い、グローバルに優秀な人材を求めるようになってきており、国際的に通用する人材育成を考えていくことが必要となっています。
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