第16回:留学生の本国に対する想い
サンクス・ギビング・デーが終わり、いよいよクリスマスです。街はクリスマスの装いを始めています。日本のクリスマスのイルミネーションも良いですが、アメリカのもなかなかですよ。
今月は、留学生の本国に対する想いについて書きたいと思います。アメリカの大学院には多くの留学生が勉強しています。彼らを見ていて最初に思うのが、「やっぱり自分の国が好きなのね」ということです。もちろん、自分の国がイヤでアメリカに来ている学生もいます。ただ、自分の国に対する熱い想いをもつ留学生は多いのです。
まずはなんといっても食べ物でしょう。「熱い想い」の最初が食べ物なの?と思われるかもしれませんが、食べ物は重要なのです。留学生は自分の国の料理に恐ろしいほどのプライドと情熱を持っているのです。
メキシコ人に聞けば、どこのメキシコ・レストランが美味しいのかはすぐ分かります。中国人に聞くと、どこのレストランが“本物”の中華だかすぐ教えてくれます。下手に「あそこの中華は美味しいよね」なんて中国人の友達に言うと、「あそこのレストランは本物の中華じゃない。中華料理を分かってない。」なんて言われます。ブルガリアの友達は、シカゴ近辺では数少ないブルガリアレストランを教えてくれます。みんなやっぱり自分の国の料理が大好きで、チェックしているのです。驚くべきことに、「イギリス料理は美味しくない」とか「味蕾の数が少ないんじゃない?」と言われるイギリス人ですら、イギリス料理が好きなのです。
留学生の多くは、食べ物と同じぐらい、自分の国の政治や経済、文化などについて熱い想いを抱いています。本国を離れていると、他の国から自分の国がどう見られているのか、他の国と比べると自分の国はどのような国なのかなどについて、考える機会は自然と多くなります。本国を離れることで初めて体感する自分の国についての考え方もあるでしょう。センシティブな話題もあります。中国人とチベット問題について話したり、韓国人と第2次大戦のことについて話したりすることもあります。異なるバックグラウンドの人と話すことによって、自分の国についての考え方は相対化されてきます。自分の国の嫌いなところも見えてきます。ただ、嫌いなところもあるけれども、やっぱり自分の国が好きなのです。
「何か国のためになるようなことをしたい」と思い、卒業後本国に帰る留学生も大勢います。ただ、その割合は専攻によっても違います。アメリカに残る留学生も多いです。アメリカに残る留学生の多くも、帰国する学生と同じように「何か国のためになることをしたい」という想いは持っています。友人のガブリエルも卒業後はアメリカかカナダで仕事をしたい言っています。そして、「アメリカにいても、自分の国のためにできることはたくさんあるよね。」と言います。自分の国に帰らなければ、何も出来ないというわけではないのです。
また、ガブリエルや他の友人たちは、本国に対する愛情がある一方で、本国に頼りたくはないという想いも強いようです。これは僕も同じです。「自分の国じゃなければ生活を楽しめない」、「自分の国の言葉でなければ友達ができない」、「母国語でなければ自分のリサーチを説明できない」というのはイヤなのです。もちろん、自分の国ではシステムが分かっています。モノゴトがどう動くかが分かっています。多くのことがスムーズに行きますし、母国語は楽です。ただ、だからといって、自分の国のシステムに頼りたくないという強い想いは持っています。「どこでも生活を楽しめ」、「気のあう人とは誰とでも友達になれ」、「母国語でなくとも自分のリサーチを説明できる」ようでいたいのです。愛しているけど、甘えたくはないというのが多くの留学生の本国にたいする想いです。
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