さきんずればせいす・・・・・ |
「史記・項羽本紀」から取られた言葉です。
江西の人びとが、秦に対して反乱を起こしたのを聞いた会稽郡の長官殷通は、項羽に対して、「先んずれば人を制し、遅れれば人に制せられる」という言葉があるとして、早急に都へ攻め上ることをすすめたとのことです。
結局、秦の都咸陽への先陣争いでは、劉邦に敗れてしまい、項羽の意図は挫折することになります。
類語は、孫子の「先んじて戦地に処りて、敵を待つものは佚す」というのがあります。
この意味は、「先に戦場に到着して、じっくりと敵の到着するのを待ち受ける軍隊は、対戦前に準備ができるから、戦闘が有利となる」ということです。
「先手必勝」とか「機先を制す」などという成句もあります。
要するに、先に機運をつかみ、敵より一歩はやく手を打つことをすすめた戦法で、それが勝利をつかむコツであると述べているのです。
ビジネスの世界で、新規商品の開発とか、新市場への進出ということを考える場合には、「先鞭をつける」ことが大切です。「先んずれば人を制す」とややニュアンスが違いますが、競争における「一番槍」をあげることの重要性を教えた諺です。
新製品の開発や新規事業の開拓などで「この分野において、先鞭をつけた」というように使います。
中国の戦国時代、晋の国に劉琨という若いときから才能もあり意気盛んな人がいました。
彼は同年輩である好敵手の祖逖に出し抜かれることを極度に心配しており、親しい友人へ次のような手紙を書きました。
「戦場に駆けつけるときに、祖逖に後れをとらぬように、武器を枕に寝ています。また一刻も早く馬に飛び乗り、彼が鞭を馬に当てる前に、自分の馬に鞭を当てるように心しているのです」つまり、ライバルより先に功名を上げるために日常から準備することが大切であると考えていたのです。
商社マンとしての体験からいっても、他人より一歩はやく、市場性があることを見いだして、その地へ赴いて地盤をきずくことが、極めて有利な展開となることを私は経験しました。反対に、一歩他社に遅れて進出すると、情報の入手なども不足がちになり、重要な得意先が奪われてしまう結果に陥ってしまいます。
「先鞭をつける」ためには平素からの準備が必要なことを劉琨は教えているように思います。