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創考喜楽

先人の知恵を拝借 故事百選 坂本宇一郎 著

風林火山

ふうりんかざん・・・・・
「戦う」という行動をとる際に、もっとも大切なことは、敵に自分の意図を悟られないようにしておくことです。あるときは、疾風のように迅速に、時には林のように静かに整然としていなければなりません。また、火のように激しく燃えることも必要ですし、山のようにどっしりと落ち着いていなければならないこともあります。

 戦国武将、武田信玄は「其の疾きこと風の如く、其の徐かなること林の如く、侵掠すること火の如く、動かざること山の如し」の句を旗じるしとして勇戦したことでよく知られています。

 

この語句は、「孫子・軍争編」に見えるもので、軍隊をいかに進軍させたらよいかを説いた章です。
原典では、これに続いて「……知り難きこと陰の如く、動くこと雷の震う如く……」とあります。
つまり、形をかえ、方法をかえて敵の虚をつく作戦の必要性を、説いているのです。

 

日本の戦国武将や軍学者は「孫子の兵法」をよく研究していましたが、日本と中国の地形や国情が違うため、実際は日本に適したように解釈しなおして活用しなければならないという説もあります。

 

孫子は、他の「九変編」で「まさに、九変の利に通ずるものは兵を用いることを知る」と述べています。
九変とは、「足場の悪い土地」「三方が他の国と接している土地」「故国から遠い土地」「三方を山で囲まれている土地」「通ると危険な土地」「攻撃してはいけない敵陣」「攻撃してはいけない城」「争奪してはいけない領土」「受諾してはいけない命令」の9つです。
つまり、迅速な行動、果敢な攻撃命令も、戦いのタブーや原則を身につけていなければ、失敗に直結すると述べているのです。

 

「風林火山」のイメージが強烈で、武田信玄の優れた軍略と勇猛な攻撃精神、城を持たなかった守りのない戦術ばかりが目につきますが、信玄は、考えの深い、軍法に明るい人物でしたから、九変のタブーについてもよくわきまえ、守備についても十分、配慮していました。

 

この成語はビジネス社会における「市場開拓」「販売促進」に利用できると思います。マーケテイングを行うときには、憤重な市場調査はもちろん大切ですが、早く市場に進出することも大切で、積極的であると同時に、先見性、スピード感が要求されます。
拡販についても、アクションが同業他社に感知されないように秘密裡にされなければならないと同時に、失敗に直結するようなタブーの条件がないかどうかしっかり、見届ける必要があるのです。

 

風林火山