ろうしやしん・・・・ |
三国志に出てくるストーリーのなかから採られた言葉です。そのあらましを綴ってみましょう。
呂布という武将は剛勇無双な人として知られ、武勇と功績からすれば、どこの国でも喜んで迎えられてよい筈の実力をもっていました。しかし、義父と主君を殺したという前歴からして、この人物とうまく折りあえるかどうかはなかなか判断がむずかしかったのです。
まず、曹操(後に魏の太祖)のところで呂布を使うかどうか検討しました。すると彼のことをよく知っている陳登は「無節操で、いつ裏切るか分かりませんよ。早いうちに始末してしまったらどうですか」と忠告しました。曹操は、この意見に直ちに同意して、「布、狼子野心なり。誠に久しくは養い難し」(狼は飼いならそうとしても無駄である。ながく手元におくことはたいへん難しい)といったので、この故事が生まれたのです。
しかし、三国志で人気のある人格者の劉備は、一方の将として使ったのでした。このことが、結果として劉備にとって命とりとなったのです。
この話には、後日談があります。劉備との戦いで関羽をとりこにした呉孫権は、この著名な英雄の才を生かし、自分の部下にして働かせてみようと思ったのでした。しかし、取り巻きの人びとは、「曹操が、関羽を捕えたとき、その才を愛して許してしまった。このことが災いして、大いに苦しめられたのです。生かしておくなんてとんでもないことです」と意見を述べました。
この結果、関羽は斬られたのです。そのときの言葉は、「狼子養うべからず。後必ず害を為さん」(狼の子は養ってはいけません。あとで必ず害があります)です。狼は人に飼われない動物として知られています。人が生涯すごしていくに当たって、何度かは、狼のような人間に出合うものです。
原則論としては、相手がどのような人でも、分け隔てなく、上手に交際を続けるよう心掛けなければならないでしょう。人間関係を円満にするためには、自分の好みや、自己中心の人物判定でよりごのみすることはタブーであり、だれにでも平等に付き合うという態度が必要です。
しかし、例外があることも肝に銘じておくことが大難を避けるコツです。曹操ほどの、人を見る眼の秀れた英雄であっても迷うのですから、実際に見きわめることは難しいことも事実です。
筆者の経験則からいうと、「ビジネスで組む相手を選ぶのになるべく広く門戸を開けておくことは大切ですが、特定の限られた取引先には、お付き合いしない方がよいものもある」ということです。