イギリスにとっては大きなショックでした。イラク戦争が大きな引き金ではあったのですが、イギリスにおけるイスラム教徒の高い失業率とそこからくる鬱積した苛立ちも一つの要因だといわれています。
そこで、草の根レベルでの対話が必要だと考えられるようになってきました。とりあえず、「仲良くしましょう」というわけです。ただ、そこで問題となってきたのが、イスラムの女性がかぶっているベールです。ベールがコミュニケーションを阻んでいるというのです。実際は、ベールには3つぐらい種類があります。簡単なスカーフで髪を覆うだけのヒジャブと呼ばれているものから、全身をすっぽりベールで覆うものまであります。ヒジャブは真知子巻きみたいですし、なかなかオシャレな子も多く、近寄りがたいという感じはしません。ただ、全身を黒のベールですっぽり覆うタイプは、確かに違う文化圏の人にとっては、コミュニケーションを阻害している面があります。公立の学校では、学校でのベールの着用が問題となりました。これは裁判で着用が認められたのですが、語学の先生が、ベールを着用しており、口元の動きが見えないということでクビになるということもあったりしました。
どうにか対話を進めていこうとしています。イギリスには、フェイス・スクールと呼ばれる「宗教学校」があります。英国国教会やカトリック、ユダヤ教、イスラム教のために7000を超える公立の宗教学校があります。それぞれの宗教をイギリスでも信仰できるように設置されたものでしたが、これがかえって宗教間の分裂を進め、コミュニケーションを難しくしているとして問題となっています。
イスラム教徒と対話をしていこうという動きがある一方で、保守的な動きもあります。イスラム教徒や移民たちに対する差別もあります。英語が上手くない移民の子どもを排除する学校もあります。依然としてイスラム教徒の失業率は、他の宗教の信者と比べて高いままです。また、勤勉な移民の子に勉強で負けてしまうイギリスの子どもが引き起こすいじめ問題も深刻です。
「市民社会」という概念はスコットランドやイギリスから生まれてきました。見ず知らずの人々がどうやったら上手く共存していけるのか、全く異なるバックグラウンドをもつ人たちはどうすればお互いに住みやすくなるのかを考えてきたわけです。そこから「公共」という考え方が出てきたり、契約社会がでてきたり、地域ごとに住み分けてみたりしてきたわけです。それでも、依然として信仰の自由や文化の多元性の保持はやはり一筋縄ではいきません。
|