第17回:どこまでアウトソーシングをするのか
小さな子どもが嫌な事件に巻き込まれることが増えています。子どもたちをどうやって守るのかは大きな社会問題です。イギリスやアメリカでは日本よりもさらに深刻な問題です。アメリカやイギリスではほとんど子どもたちが外で遊んでいません。これにはとても驚きました。鼻をたらしながらも常に外で遊んでいた僕にはとても不自然に映りました。

 外で遊んでいるのは、経済的に恵まれないマイノリティーの子どもたちばかりです。子どもたちはどうやって遊ぶのかといえば、友達の家で遊ぶか、放課後や週末に行われる野球やサッカーなどのスポーツなどのアクティビティで友達と遊ぶのです。


イギリスでは11歳以下の子どもを家に残して外出すると、親は逮捕されます。子ども1人で家の前で遊ばせているだけで通報されることもあるようです。アメリカでは州によって違いますが、多くの州で、子ども1人で家で留守番をさせただけで親は逮捕の対象となります。イギリスと同じように家のまえで子どもを1人で遊ばせただけでも逮捕されるのです。イギリスやアメリカでは必ずといっていいほど学校までの送り迎えがあります。日本のように子どもたちだけで登下校をさせている方が少ないぐらいです。

 親は大変です。学校の送り迎えはしなくてはいけません。子どもが友達と遊びたいと言えば友達の家まで送っていかなければいけません。友達が家に来たら、おやつを出してあげないといけません。おやつもださずに遊びに来た友達をほっておいて、TVゲームばかりさせていると、親からクレームが来ることもあります。スポーツをやっていれば、その送り迎えもあるでしょう。とにかく、子どもだけで外を一人出歩くということがないのですから、大変です。

 親が働いていたり、病気だったりする場合には、ここまでするのはムリです。どうしても都合のつかない日もあるでしょう。そこで、ナニーやベビーシッターに入ってもらうわけです。ナニーやベビーシッターはイギリスやアメリカではとてもポピュラーです。プロフェッショナルのベビーシッターから学生のアルバイトまで様々ですが、かなり多くの家庭で使われています。欧米では、ナニーやベビーシッターだけでなく、家の掃除をしてくれるお手伝いさんや犬の散歩をしてくれるドックウォーカー、老人の世話をしてくれるエルダー・ケアーなど、家庭のなかの仕事を請け負ってくれるサービスがたくさんあります。経営学の流行で言えば、家の中の仕事の“アウトソーシング”ですね。

 このアウトソーシングはまだまだ日本では、“他人”に子どもを預けるのには抵抗があるでしょう。「子どもを預けて本人は自分の好きな仕事している」なんて姑の声が聞こえてきそうです。ただ、子どもをしっかりと守らなければいけない環境の中で、なおかつ自分たちのやりたい仕事を続けたり、自分たちの時間を作ったりしたいと考えれば、当然そのようなサービスが生まれてきます。疲れた顔で子どもたちを迎えに行くよりも、送り迎えはベビーシッターを頼んで、自分は仕事から帰って少しリフレッシュしてから子どもを家に迎えるということを選んでいるわけです。

 デイケアーなどのサービスは増えてきてはいますが、日本ではまだまだこのコンセンサスは完全にはできていません。どのように信頼あるビジネスを作れるかと同時に、このコンセンサスがどのようなものになるのかは注目です。
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