この他にも、地下鉄や電車の値段がピークとオフ・ピークで変わったり、週末と平日で変わったりします。現金で料金を払うよりも、カードを使った方が安く、カードを利用させるようなインセンティブをつけたりもしています。混雑するような道路には、バス専用のレーンがあり、バスがスムースに運行できるように工夫されています。
ただし、この交通機関は、ロンドンに住む人の悩みの一つでもあるのです。頻繁にとまる上に、毎年値上げされるのです。あまりに頻繁に問題が起きるため、各駅に「今日の地下鉄運行状況」というお知らせのボードがあるぐらいです。バスが途中で止まってしまい、乗客が降ろされることもよくあります。ラジオの交通情報では、車の渋滞をレポートするのと同じように、地下鉄の遅れをレポートするのです。一方ではイノベーティブなのですが、オペレーションがとても悪いのです。
どうしてこういうことが起こるのでしょう?企業では、長期的な戦略をつくる場合、意思決定をする人があまりに現場に近いと、なかなかイノベーティブなアイディアは生まれないと言われています。現場に近すぎると、どうしても短期的な意思決定ばかりになってしまい、長期的な大きな意思決定ができないというわけです。
ロンドンの交通機関の場合、イノベーティブなアイディアはつぎつぎとでてきます。そして、それがどんどん導入されていきます。ただし、そのイノベーティブな戦略に、現場のオペレーションがついていかないのです。意思決定をする人が、現場と離れすぎているため、現場が追いつかないような決定をしたり、現場が必要としている投資をしなかったりすることがオペレーションを悪くしている原因の一つです。
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