愛、屋烏に及ぶ
愛情がわいてくるとその相手に関係のあるものすべてに愛情が移ってしまう。烏は普通は嫌われる鳥ですが、自分の建てた家屋の屋根にとまっていると可愛くみえてくる位ですから・・・・・・・・。
出典は「尚書大伝」で原文は「周公日く、その人を愛する者は、その屋上の烏を愛す」となっています。
わが団でも、愛憎が本人以外に及ぶことを「坊主憎けりゃ、袈裟まで憎い」などと言ったりします。
中国ではこの類似のものとしていろいろな格言があり、たとえば、「怒りは水中の蟹にも移り、愛は屋上の烏に及ぶ」というように自分の感情を他のものに転化するということに使っているのです。
いずれにしても、愛が「神の業」として高い評価を受けていると同時に、「愛」の感情に溺れてしまうと、正しい判断ができなくなり、「愛は盲目」といわれるようになる危険があるといえましょう。
烏は不吉を呼ぶ島とも考えられており、色が黒く、しかも悪知恵が発達していますし、毎日のように何処でも見かける烏ですから、いくら止まっている家が自分の愛情をこめて建てたものといっても、その上にいる烏を愛するというのは、よほど、目が眩んでしまったといわれても仕方がないでしょう。
愛に心が獲われて、判断を狂わせてしまうケースとしては、とくに母親と子供の関係、恋人、愛人との絆などがあります。
また、企業内の愛憎事件‥…・つまり、上司のえこひいきによって、好みの人物ばかりを自分の周囲にあつめ、その閥をつくりあげ、一定の人のみを重用するという話も聞きます。
ときには、男女関係よりもっと激しい嫉妬や痴情沙汰がおき、身内での血で血を争うような抗争事件が起こったりするのです。もちろん、利権が絡んでのこともあるのですが、第三者から見ても、不公平でアンフェアなことが衆人の目の前で権力者によって実行されることが少なくないのです。
上に立つ者にとって部下管理、なかでも人事考課の査定は、たいへん大切なアイテムです。部下の能力や業績が正しくできないようでは、組織をうまく運営していくことは無理でしょう。
考課制度にまつわる専門用語のなかに、「ハロー効果」というものがあります。
ハローは太陽や月のまわり生ずる光芒のことです。つまり、本人の良い特徴や周囲の影響力で、実際以上に目が眩んで、なんでも良く見えてしまう現象のことです。
「ハロー効果」に眩惑されないで、公平な人事を行うことは人事担当者の必須条件の一つです。
「贔屓(ひいき)の引き倒し」はひいきをするあまりにやったことが、逆に本人の迷惑につながる反対効果のことをいいます。自分の感情におぼれて一時的な衝動にかられて行動することなく、公平な人事評定をしたいものです。
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