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第36回:流行りの「経営」をインスタントに取り入れること
  経営学には、流行があります。流行りのタームもあります。書店の「経営」棚に足を運ぶと、さまざまなビジネス書が並んでいます。かなり固い感じのビジネス書から、自己啓発的なもの、個別の企業や経営者礼賛もの、マニュアル系のものまでさまざまです。
 そして、そこではさまざまなタームが日々創られているのです。少し考えて見るだけでも、たくさんあります。有名なものだけ挙げたとしても、例えば…
先端製造技術(AMT: Advanced Manufacturing Technology)
トータル・クオリティ・マネジメント(TQM)
ビジネス・プロセス・リエンジニアリング(BPR)
ベスト・プラクティス
コア・コンピタンス経営
ブルー・オーシャン戦略
アメーバ経営
 などなどさまざまです。この他にも、〇〇型リーダーシップや〇〇戦略などと銘打たれるコンセプトは枚挙に暇がありません。次から次へとでてきます。
▲一橋大学イノベーション研究センターでは、
夏に、イノベーションを考えるサマースクールを開催しています。今年の夏も、若手の研究者(Young at Heartのシニアも含む)が集まり、活発なディスカッションが行われました。

 これらの流行りの経営を導入すれば、大きな成果が上がるとすれば、すぐに日本経済は良くなるはずです。これだけの量のビジネス書がならんでいるのですから。しかし、これらのコンセプトをそっくりそのまま組織の中に導入したとしてもなかなか成果は上がらないのです。例えば、1990年代にAMTを導入し、失敗する割合は50%以上だったと言われています。TQMを導入した企業で、1年後にそれが失敗に終わっていた割合は実に80%に達しているのです 。

 なぜ、上手くいかないのでしょう。成功した企業のエッセンスを抽出したとしても、それは簡単にはコピー出来ないからなのです。そもそも、簡単にコピーできるようなものであれば、長期的に持続可能な競争優位の源泉とは成り得ないとも言えます。成功した企業にはそのエッセンスをしっかりと下支えする組織のルーティンがあるのです。安易に外からコンセプトだけを借りてきて自分の会社に導入しようとすると、せっかく自社内で構築していたルーティンが壊されてしまうことすらもあります。安易な実践は意図せざる結果を招いてしまう可能性が高いのです。

  もちろん、ビジネス書は全く意味がないわけではないと思います。考えるヒントを与えてくれることもあるでしょうし、新しいアイディアを見るけることもできるでしょう。ただし、本当に重要なのは、しっかりと自分で考える下地です。

それでは、「自分で考える力」はどうしたら身につくのでしょう? 安易なノウハウがあったら僕も知りたいぐらいですが、時間をかけて、「良書」と呼ばれるものを読み込んだり、多くの人と議論したりすることによって鍛錬していくしかないのでしょう。

マネジメントに、それほど「インスタント」なことはないのです。


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