| 第4回：ヒトにこそ |
|
日本の教育については、ずいぶんと大きく制度が見直されてきています。
詰込み型の教育が良くないとして、授業時間を減らし、教育内容も軽減させたゆとり教育をやってみました。今度は、“ゆとり世代”の学力が落ちていると言って、また制度を変えようと。全国学力テストをやったり。（具体的なデータなしでこれまでよく制度の変更なんてできたものだと思います。雰囲気だけで政策を決めないでほしいですよ。本当に。）
|
 |
|
▲8年ぶりに初詣に行ってきました。
近所の神社なのですが、やっぱり良いですね。。 |
|
日本は天然資源に恵まれている国ではないですから、ヒトこそが唯一の大切な資源です。いかに優秀な人をたくさん創っていくかが日本にとっては最重要課題です。もちろん、教育は学校だけではありません。家庭での教育は言うまでもなく、地域の環境も重要です。「教育」を語るときに結構忘れ去られていることが多いですが、大切なのが、企業での人材の教育です。
日本では教育のかなりの部分を会社が負担していました。毎年4月に新卒を採用し、OJTなどでしっかりと鍛えていく。即戦力をとるというよりも、自前で教育し、優秀な人材を育ててきたわけです。もちろん、学校ではありませんから、机に座らされて、教科書で勉強するというものではありません。社会人としてのマナーから始まり、基本的なビジネスの仕組み、それぞれの業界をとりまく経済環境や経営動向、経営のセンスなどが上司に怒られながら刷り込まれていくのです。
でも、会社がそれを負担できなくなってきている。少なくとも、全員に対してそれを負担することは難しい。要因は2つ。労働市場の流動性が進んだため、人材に投資をしてもすぐに辞めてしまう可能性が高まったことが第1の要因です。2つ目の要因は、企業がそこまで人材の育成にお金をかけられなくなってきたことです。そのため、スキルのある、仕事のデキル即戦力の人材が求められるようになってきました。悠長に新人を教育している時間も費用もないのです。
もしも、これまでは企業が負担していた教育のコストをどこも負担しないとすれば、大きな問題です。長期的に見れば、企業はデキル人材を求めてどこへでも行きます。日本人より優秀な人材が安く手に入るのであれば、わざわざ日本に拠点をおく必要はない。人件費も高く、優秀でもない人材を雇い続けられない。日本に優秀な人材がいなければ、海外から調達してくるか、それを求めて海外に進出するかのいずれかです。これは日本経済にとっては大問題です。
そんなとき、OECDの加盟国の教育予算のGDPに占める割合で、日本は最下位ですよ。知識社会がますます進んでいるというのに、これはとってもまずい。ただでさえ、日本の高等教育機関は国際競争力がないと言われているのに、毎年1％ずつ予算も減っている。
もちろん、お金をかければそれで良いというわけではありません。競争させて、資源の重点配分をするということもようやく始まりました。教員免許更新制も始まります。まだまだ、やらなければいけない改革は多いでしょう。
それでも、お金が必要なこともありますよ。日本の先生は、小・中・高校や大学を問わず、教育や研究以外の仕事がやたらと多い。先進国の中で最も多いと言われています。彼らに本来の仕事に専念してもらうために、スタッフの人材をより多く雇うことも大切でしょう。もっと優秀な人材が小・中・高校などに集まるように、お給料を高くすることも重要かもしれません。能力の高い先生をきちんと評価するようなシステム創りも大切です。イギリスやオランダの学校と比べると、日本の学校の設備はかなり貧弱です。学校のインフラを整えてあげる必要もあります。
企業での教育も変革していかないといけません。これまでのようなOJTや研修のやり方を維持するのは難しい。けれども、優秀な人材は育成していかないといけない。まだどこも新しいやり方を模索しているところです。ここをうまく変革できたところには大きなチャンスが待っているはずです。
|
 |
|
▲国立の通りです。
富士見通りと言って、晴れると富士山がきれいに見えるのですが、なにせこの電線！
この電線さえなければ、日本の街並みはもっときれいなのですが。 |
|
教育は学校をでたら終わりではありません。最後まで形を変えてついてくるものです。どのように優秀な人材を育成し、活用していくかは社会のシステムとしてデザインしていくべき問題です。企業がこれまでのようにそのコストを負担するのが難しくなってきている今、先進国最下位の教育予算の割合ではあまりにもまずい。日本の長期的な戦略としてはまずいですよ。ヒトに投資することは、長期的に見れば、かならずペイするのに。
|
|
| Back |
Next |
