山下 聖児氏
昭和産業株式会社
総務人事部人事課

1970年生まれ
神奈川県出身

趣味:旅行・温泉めぐり、子供と遊ぶこと
今回のゲストは、小麦・大豆・とうもろこしを主原料に、製粉・油脂・ぶどう糖・配合飼料など幅広い事業を展開する食品メーカー、昭和産業の教育担当、山下聖児さんです。
近年、「食への信頼」という観点から食品業界に対する関心が強まっていますが、昭和産業では経営理念に沿った経営方針に基づく企業活動を展開しており、その考え方に貫かれ構築された教育体系や人材開発、人事制度についてお話をお聞きしました!


常に、新しい教育機会を
弊社では「人々の健康で豊かな食生活に貢献する」という経営理念に基づき、3つの経営方針、すなわち『収益性の向上』、『安心・安全・透明性の向上』、『社員の質的向上』を掲げています。中でも『社員の質的向上』に関しては、社員全体の能力の向上が会社としてのレベルアップにつながるという考えから、社員教育の重要性を常に意識した取り組みを行なっています。例えば、専任の社内講師が会社の経営方針や中期経営計画、あるいはコンプライアンスなどをテーマに掲げ、社員全体に浸透させレベルアップを目指す「昭和塾」に始まり、各種階層別研修、あるいは選抜型の外部派遣研修や海外研修など、多様な内容を取り揃えています。研修については、毎年同じことを繰り返しているだけでは内容が陳腐化していくと思っていますので、常に何らかの新しい取り組みや内容を採り入れていきたいと考えています。
今回、新たに実施した内容としては、8月に実施した「新入社員フォローアップ研修」があります。入社5ヶ月経った時点で新入社員を一同に集めるということで、ここ十数年では初めての実施となるのですが、これは近年言われている「若手社員の離職率上昇」に対しての取り組みです。弊社では幸いそれほど離職率が高いわけではありませんが、やはり予防策を講じていこうということで採り入れました。同期間のヨコのつながりの強化と、日常を離れたところで業務あるいは日々の生活などを振り返り、考えることを目的としています。内容は「座禅研修」です。1日目は京都の寺院で座禅を組んだり、写経をしたり、あるいは境内を清掃し、精進料理をいただくなど。2日目は場所を熱海に移し、会長からの講義を頂き、懇親会を実施するといった内容でした。
実施前は“大変そう”というイメージが先行し、新入社員は1日目の寺院での研修にしり込みをしていました。座禅なんて普段やりつけないことですし。引率者の私もすべて同じ内容を体験してきましたが、座禅を組んでいるときはいろいろなことを振り返ったり、見つめ直したりできるんです。仕事や職場のこと、そしてこれからの人生のこと。新入社員にとっては、日々の業務を覚えることに必死という時期ですから、日常から離れた部分で自分のこれからのこと、「キャリア」というものについて考えることができて大変貴重な体験になったようです。参加者全員が足や腰、背中が痛くなって大変でしたが(笑)。
弊社の人材開発においては、個々人のキャリア形成も重要視していますので、新入社員の段階でこうした気付きの場を与えられたのは良かったと思います。

人事制度の転換期
2000年に人事制度を大きく見直し、それまでの単線型人事制度から複線型人事制度に移行しました。
現行制度は30代前半までの期間は複数の分野を経験しながら力をつけるとともに、自分の方向性を考える時期として位置づけます。その後、マネージャー職、スペシャリスト職、エキスパート職の3つの道筋を社員自らが選択できるようにしています。これによって、従来の単線型人事制度よりも、社員自らの強みや持ち味を活かし、発揮してもらうことが可能になったと言えます。
社員の強みや持ち味を活かすという点では、弊社では入社4年目以降の社員を対象に「自己申告制度」を導入しています。対象者にはこれまでのキャリアを振り返ってもらい、過去の業務経験や将来のビジョン、今後希望する業務や事業分野を申告してもらいます。会社としては、何となく仕事をこなしてもらうよりも、自分自身がやりたい業務に積極的に取り組んでもらう方がパフォーマンスも上がるでしょうし、能力向上にもつながると考えています。なので、出来る限り多くの社員にそうした機会を提供したいと思っています。単なるジョブローテーションというよりも、社員のキャリアを重視しながら、会社の方向性とのバランスをとりつつ配属を行なっていくという意味合いが強いです。
「社員のレベルアップを図ることで、会社のレベルアップを目指す」という考え方がこうした制度を支えています。

研修担当としてのこれから
私自身「人事をやりたい」と自己申告をして、今の業務に携わりました。今は、教育や採用、人事制度などの人事企画業務を中心に担当していますが、将来的には労務を含めた多くの業務を経験し、「人事労務のプロ」になりたいと思っています。
それには、様々な業務経験を積むことも必要ですし、社外の方との接点を多く持って、視野を広げたいとも思っています。今、食品関係の同業他社の方が集まる勉強会に参加しているのですが、そうした集まりの中でも、やはり違った視点での学びが多く得られる実感はあります。
実は、私は、会社の育児休業制度を利用した初の男性社員なんです。育児休業を取ることにより仕事を離れる不安もあったのですが、実際に休暇を取得してみて、育児の大変さや、育児休業を取得している女性社員の気持ちというのも(少しですが)理解できたような気がします。こうした体験も、これから人事制度や教育制度を考える上で貴重な経験となったと思います。
あらゆる視点で物事を捉えたり考えたりすることが、全社的な立場である人事担当には一番重要なことなのかなと思いますね。

どうもありがとうございました!

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