毎年、新人研修の中で必ず触れる言葉があります。「小確幸」という言葉です。
これは村上春樹さんのエッセイの中に出てくる言葉で、「小さくとも確固たる幸せ」を略したもの。人間誰しも大きな夢や目標には敏感に反応するのだけれど、日々のあちこちに転がっているこの小確幸には無頓着な人が多いのです。
例えば、朝一番のコーヒーがやたらとおいしくて微笑んでしまったり、今年初めて金木犀の香りを嗅いだ朝、ああ、秋だなぁ、と思いっきり深呼吸してみたり、帰り道に電車の中で読了した本の余韻にいつまでもいい気持ちが続いたり・・・こんな風にいたるところに小確幸はひそんでいます。
私には、誰もが羨むような成功を手中に収めた人よりも、この小確幸をたくさん味わえる人のほうが幸せに思えます。
さて、世の中の生き方を私は大きく2つに分けています。「MUST」的生き方と「WILL」的生き方です。
「MUST」のあれこれを並べてみましょう。出席しなければならない会議、発言すべき意見、行かなければいけない場所、書かなければならない手紙・・・う〜ん、書いているだけで気が滅入ってしまいます。
それでは「WILL」はどうか。どうしても出席したい会議、ぜひ発言したいとっておきの意見、今すぐに行ってみたい場所、やっとゆっくり書ける手紙・・・「WILL」のあるシーンを書いていると、知らずに表現がふくらんでいきます。
新人研修をしていると、文字通り、たくさんのドラマに出会います。見ていると、どうやらそれは「MUST」と「WILL」のぶつかり合いのようです。そのうちに新入社員たちは気づき始めます。少し背伸びをしたとしても、どうやら「WILL」のほうがカッコいいゾ!
先輩方の研修を見ていると、この「MUST」と「WILL」が別の言葉で表されます。「被害者意識」と「当事者意識」です。横で見ていると、先輩方はボキャブラリーが増えて小ざかしくなった分、難しいことを並べたりもしますが、結局はあの頃の「MUST」に戻ってしまっただけのこと。
新人研修であれ、中堅社員研修であれ、アプローチはいろいろですが、研修というものは何かに気づくこと。忘れていたことを思い出すこと。
研修会場でそんなシーンに出会うたび、私は心の中で小確幸を味わっています。
どうもありがとうございました!
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