各界の一言居士のみなさんに、日本を、企業を、そして我々ビジネスマンを“よく”するために、
“最近アタマにきていること”を、リレーで綴っていただくコーナーです。
◇第1回のゲストは米倉誠一郎氏

イノベーションと云えばこの人。第1回目のゲストは一橋大学の米倉誠一郎教授です。
1953年東京生まれ。一橋大学社会学部および経済学部卒。同大学院社会学研究科修士。現在、一橋大学イノベーション研究センター教授。
 BMWジャパンのヴィルシュ社長に誘われて、生まれてはじめてF1というものを見た。というのも、F1参戦3年目でBMWは今年第3位という好成績だからだ。
 名古屋 まで出かけそこから一路爆音鳴り響く鈴鹿サーキットまでいくと、そこには技術の人間の祭典があった。最新のコンピュータを駆使したハイテクの世界と、勘と経験に培われた職人芸。マシンと道路状況をくまなく把握した繊細で大胆なドライバーと数秒でタイヤを取替えマシンを整備するチームワーク。まさに自動車技術の最高峰を担う一大ショーだった。

 うーん、これはすごい。GMやフォードは参戦すらもできない。 あのトヨタやホンダでさえも、いま絶好調のフェラーリ・チームを打倒するにはずいぶんと時間がかかるに違いない。 
しかし、もっと驚いたことは、F1がオリンピックやワールドカップとならぶ世界でも比類ないエンターテイメントだということだった。サーキットのまわりのブース運営や食事サービスなどは各チームと一年契約をした専属のチームがオーストラリアを皮切りにブラジル、アメリカ、モナコ、スペイン、日本を巡って歩く。まさに、一大サーカス一座のようなものである。偶然一緒だったソニーの安藤社長は、F1の大ファンでまさに世界を追っかけるほどだという。安藤氏いわく、「日本はこのF1の世界的な価値がわかっていない」という。ヨーロッパではサッカーのワールドカップのような興奮で街中が盛り上がり、大きな経済効果を生んでいるという。モナコなどは国のひとつの重要な戦略産業だともいう。

 そうした現実に比べると、鈴鹿はあまりにもおそまつ。街の創りや駅の名前(白子駅というのだが、鈴鹿のブランド戦略からいえば絶対に「鈴鹿」とすべきだ)など、この世界的な祭典を最大限利用する態勢とはとてもいえない。日本が21世紀、知識産業であるソフトウェア、エンターテイメントなどで立国するならば、こうした祭典をいかに街づくりに生かし、観光収入だけで地方が自立できる道などを真剣に考えなければならない。まさにディズニーランドをつくり、アジア各地から人々呼んでこな ければならないのだ。

 来年からは上海がF1の誘致成功した。このままいくと、エンターテイメントの世界でも日本は中国に負けるかもしれない。

特別インタビュー
怒涛のように変化の波が打ち寄せてきている・・・・.。私たちは、この変化の荒波をどう泳いでいけばいいのか? 「イノベーション」と「エキサイティング」を信条とする一ツ橋大学教授米倉誠一郎さんに訊いてみた。


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