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奇跡を信じる若者が急増

非合理的な存在や力を信じる若者が増えています。
1973年から継続して5年おきに行っている「日本人の意識」調査(個人面接法による)では、神や仏とならんで、あの世、奇跡、お守り・おふだの力を信じるかを訊いています。この結果を見ると、図の通り、若者の中でこうしたものを信じる割合が顕著に増加しています。

非合理的な存在や力を信じる若者が増えている
(資料)NHK放送文化研究所「現代日本人の意識構造[第7版]」
2008年では奇跡を信じる若者は38%と35年前の18%の2.1倍となっています。あの世を信じる若者、お守り・おふだの力を信じる若者も、同じ期間にそれぞれ、3.7倍、2.4倍になっています。1993年から98年にかけてオウム真理教事件(1995年)の影響で3つの質問ともに信じる者が減りました。ところが、現在では、この一時期の減少を超えて奇跡等を信じる若者が増加しているのです。
また毎回の調査で若年層から5歳刻みで回答者が移って行く先の中年層もだんだんと若者層に近い考え方になってきています。一方、逆に、60歳以上の高年層では、こうした非合理的なものを信じる者の割合は減っています。
我々(筆者は最近高年層に突入)は、若いころ、古い世代の人間のように非合理的なことを信じるのは、非近代的、前近代的であり、知的に劣る人種だと思っていました。こんな考えの者が高年層に増えてきたので、60歳以上ではあの世、奇跡、お守り・おふだの力を信じる者は減っているのだと考えられます。一方、現代の若者は、こうした考えからは自由であり、気楽に非合理的な存在や力を信じるようになったのでしょう。
あの世や奇跡やお守り・おふだの力を信じようと信じまいと現実生活に余り影響はなく、どっちでもよいことだともいえます。世代による感覚の差を笑って嘆けばよいのです。
しかし、オウム真理教のような非合理的な宗教活動、あるいはそれより深刻なことですが、非合理的な目標を掲げる政治運動が、今後、こうした考え方の変化をベースに勢力を増すのだとしたら笑ってばかりいられません。
日本人10人が犠牲となった今年1月のアルジェリア人質拘束事件を引き起こした犯人グループには20代のカナダ人の高校同級生が含まれていました。これについて、カナダの外相はホームグロウン・テロ(欧米で育ち欧米の価値観を知るイスラム過激派が欧米を標的にするテロのこと)への「重大な懸念」を示しました。
日本の若者の非合理的なものを信じる傾向は、こうしたイスラム原理主義につながる暴力事件やそれに対して非合理的に反撃したともいえる米国の戦争などと国境を越えて通底している世界共通のトレンドなのでしょうか。気になります。
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