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はじまりはいつも小さな成功体験
〜できるという確信に、復活のエネルギー充電作用がある vol.1 |
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学年トップの学生が成績1番をキープするのと、学年ビリの学生が成績をビリから10番上げるためにテスト勉強するのでは、どちらがつらいのでしょうか?
両方経験した人に聞いたことがあったのですが、その人は後者だったというのです。 先が見えない中で「お前は勉強に向いてないんだ」などと周囲に笑われて悔しい思いをしたり、「自分は何をやってもだめなのでは?」という不安でやる気を失ってしまう。そんな中で勉強するのは本当に苦しいことだったそうです。
トップ維持ももちろん大変だけれど、ビリから成績を上げるときの先の見えない中でのわずかな前進のための努力の方が圧倒的につらかったというのですね。その方は、ひとたび「こうすれば成績があがるんだ!」と実感できた瞬間から、成績はそこまで上がらなくても、非常に積極的で前向きな姿勢が湧いてきたのが不思議だったとも言っていました。
ある意味、勉強にかぎらずつらい時の心理状態って、これに近いところがあるのかもしれません。今回は、この”小さな成功体験”が持つ「不思議な力」を生かしたストレス対処法について書きたいと思います。
「やればできるんだ」と思える体験を積み上げることは、とても重要なことです。このことは精神医療の現場でもとても重視されているのです。
たとえば、効果の高いカウンセリングである認知行動療法や対人関係療法は、短期精神療法といわれます。だらだらと何年もするのではなく、通常たった10〜20回程度で終了できてしまうのです。なぜそんなことが可能なのか?と不思議に思うかもしれませんがそこには秘訣があるのですね。
患者さんが抱えているすべての問題を一緒に扱うのではなく、あくまでも小さな成功体験を実感できるように入り口だけをトレーニングするのです。それは、たとえ、うつ病や摂食障害のような精神障害といわれるレベルになっても同じです。
人はつらい状態を早く抜けだしたいので、とかく小さな前進を馬鹿にして、一度にいろいろなことを変えようとして失敗し、「ほら、やっぱりだめだ」とますます自分を追いつめてしまう、という悪循環に陥りがちです。
そこで、身近な人間関係や仕事といった毎日の生活のほんの小さな一部分からでよいので、少しずつ改善することを目指す。そうすると、小さな成功体験が積み重なり、不快な状況を改善していこうという前向きの勇気や自信が生まれるのです。人は一度、「やればできるんだ」と思えれば、あとは自分の中でどんどん工夫していけるのですね。それが、ストレスにも強いタフな心をつくっていくのです。
はじめの一歩である小さな成功体験は、私たちが考えている以上に、つらい心を癒し、その先へ進もうという希望への扉を開いてくれるものなのですね。
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