まだ3月だというのに、屋外プールから笑い声が聞こえる。よく見ると、年配者数人が水に浸かりながら雑談を楽しんでいる。歩道を挟んでプールの反対側にあるテニスコートからも時折、歓声が聞こえる。そこから歩いて5分程行くと、突然ゴルフ場が現れ、クラブを脇に抱えてゆっくり次のホールに向かうゴルファーの姿が見える。
真っ青な空。照りつける太陽。気温華氏80度(摂氏26度)。アリゾナ州ツーソンの郊外にある「Voyager RV Resort」というレクリエーショナル・ビークル(Recreational Vehicle=RV車)専用パークには、平日まだ昼にもならないというのにバケーション気分で生活を送っている人々がいる。退職後、仕事から解放され、自由を満喫している50代から70代の人々の集まりだ。秋から春にかけて温暖なアリゾナ州を渡り鳥のように訪れる避寒者で、スノーバード(Snowbird)と呼ばれている。
私がパークを散策中に出会ったジョンソン夫妻も、イリノイ州ロスコーからのスノーバードだ。三匹の愛犬と共に8万2千ドル(約900万円)のRVでやってきた。ダンさん(62)とジャンさん(59)がこのVoyagerパークを訪れるのは今回で四回目。他のRVパークも経験したらしいが、ここがナンバーワンだという。清潔だし、滞在者がとても親しみやすい。それに、欲しいものは何でも手に入るからパークから外に出る必要もないと、褒め言葉ばかりを連発した。
確かに、パーク内で行き交う人は愛想がよく、知らない人にも笑顔で挨拶する。誰とでもすぐ友達になれそうな雰囲気だ。RV1500台以上を収容できるというツーソン最大のこのパークには、プール、テニスコート、ゴルフ場に加え、卓球場やレストラン、ギフトショップ、フィットネス・センター、診療所等々、日常生活やレクリエーションに必要なものがほとんど全て用意されている。
そのサービスの良さが認められて1992年、2001年、2004年には 「National
RV Resort of the Year」 に選ばれている程だ。こうした施設は、RV車の住民はもとより、パーク内に建てられた1000戸以上の住宅や簡易住宅の住民も利用でき、第一線を退いて老後を楽しくのんびり過ごそうとする数千人の人々の出会いの場ともなっている。
一週間の滞在中、私もジョンソン夫妻以外、何人ものパーク住民と話す機会を得た。たまたま開催されていた手芸品展示会で会ったバーン・ブラスさんもその一人だ。このリゾートパークの住民となってもう15年。
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"Voyager RV Resort"パーク内に並ぶ様々なRV。車内にはキッチン、トイレ、ベッ
ド、テレビ等、日常生活に必要とされるものは全て備わっている。あるRVディーラー> によれば、9.11以後、国内旅行者が増えRV業界は活況だとのこと。100万ドル
(約一億円)以上するRVもあるという。 |
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Voyagerパークのオペレーション・マネージャーとして多忙の日々を送るスー=フ ラーさん。数年前、ミシガン州からスノーバードとしてやってきたのだが、The Voyager Groupのオーナーに頼まれ、今日ではフルタイムでパークのやマーケティン グやサービス向上に取り組む。パーク利用者の年齢が下がると共に利用者数は年々増 加傾向にあるとこと。ただ「年齢の若い人ほど要望が多い」という世代の価値観の違 いを感じさせるコメントもあった。ちなみに、パーク利用料は、1月から3月にかけては、1日37ドルから40.5ドル。週単位の場合には199ドルから216ドル月単位では560ドルから609ドル、年間では3595ドルから3645ドルになるとのこと。 |
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