研修企画のあれこれを
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研修制度の作り方・進め方

Vol.1集合研修って、何ができるの?

スキル習得だけではない、研修に期待すること

人材育成の方法の中でも、集合研修を実施することは、企業にとってさまざまなコストがかかります。例えば、研修に向けた準備から実施に至るまで、人件費をはじめとした大きなコストがかかりますし、受講者は通常の業務を離れて参加するため、その分だけ仕事が進まない、つまり時間コストがかかることになります。

これらのコストに見合う成果を出すためにも、研修では仕事で必要な知識や技術を得られることはもちろん、仕事に対する前向きな姿勢をもってもらうなど、スキル習得にプラスして期待する効果をしっかり認識する必要があります。

① 会社のビジョンや求める人材像について
従業員に認知・理解させる絶好の機会変化の激しい環境で組織として強くなるためには、目指す目的や目標に向かうことが必要です。そのためには、企業が目指すビジョンや求める人材像について、従業員全員に浸透させなければいけません。研修は、企業理念や経営方針を従業員に伝えたり、企業が培ってきた専門性や独自のノウハウを教えたりする絶好の機会として活用できます。
② 仕事に対する意識の向上が期待できる
ビジネスは正解のない課題を解決し続けることでもあります。どんな事態に出会っても適切な対処ができる、それなりの答えを出すことができるようになるためには、知識やスキルを高めることが欠かせません。それと同時に、仕事に対する高い目標意識やモチベーションをもっていることも必要です。研修に参加することで、「もっと知識やスキルを生かそう」「仕事の質を高めよう」という意識が向上します。忙しく日常業務を行うなかで、そうしたきっかけを作ることは難しいのですが、研修ではこうした動機づけに大きな効果が期待できます。
③ 自分の強みや弱みを知るとともに、良好な人間関係を築くことができる
研修では、同じ場所で同じ時間に、複数の従業員がともに同じ内容の学習を体験していきます。なかには、グループで取り組む演習もあり、他部署の人同士が協力・助け合いをしたり、積極的なコミュニケーションを図って意見交換をする場になります。そのように、普段は接しないような多くのメンバーとともに活動する経験を通して、自分の強みや弱み、自分の立ち位置が認識できるようになります。また通常業務に戻ってからも、部署を越えてお互いに助け合ったり、情報交換がスムーズに行えるなど、仕事を進めるうえでよい影響となるような人間関係を築くことができます。
④ 職場のメンバーに好影響を与えるきっかけになる
研修後は、職場に戻って実践していきます。そこでは、これまでとは違う仕事の仕方を試してみたり、職場のメンバーに働きかけるようなことも出てきます。そうした受講者の行動が刺激となって、職場によい影響を与えることができます。研修に参加した従業員の意識が高まり、学んだことを職場メンバーと共有することで職場全体のレベルアップにもつながります。

研修のテーマとジャンル

では、研修にはどのような種類があるのでしょうか。全体像を把握しておきましょう。研修のジャンルを分類するうえで、最も一般的なのは、「階層別研修」「職能別研修」「テーマ(課題)別研修」というパターンです。

① 階層別研修

受講者を、勤続年数や役職といった基準で分けて実施する研修です。対象者全員に対して、強制的に同じ内容の研修を行うものも多くあります。対象者全員の能力(レベル)を相対的に上げたり、階層に応じた気づきを与えたりすることが大きな目的になっています。特に入社時や昇進・昇格時に、新入社員研修・中堅社員研修・管理職研修などを行います。階層別研修は、各階層によって異なる、「求められる役割」について認識してもらい、能力・スキル・知識の向上を図ることで、組織としての力を高めていくための重要な教育です。

② 職能別研修(専門教育)

営業部門・経理部門といったように、職種ごとに行う研修で、それぞれの業務分野において求められるスキルや専門性を高めることが目的です。企業によっては、かなり専門的な内容まで教育させる場合もあるため、人数は少人数制に、講師は研修テーマに精通した従業員が担うという場合も少なくありません。

③ テーマ(課題)別研修

部門を問わず、必要な知識・技術を高めるため、また、企業が抱えている課題を解決するために、テーマを決めて行う研修です。部下指導研修や対人能力研修、タイムマネジメント研修、ほかに少人数でつくられたグループ(小集団)を対象としたものなどです。昨今、業務の幅が広がってきたこともあり、テーマ別研修で取り上げる内容も多岐に渡っています。アイデア発想研修、情報活用力研修、イノベーション研修など、仕事で新しい価値を生み出していくためのテーマが、とくに人気が出てきています。

以上の研修以外にも、従業員の自主性を尊重した自主参加型研修(公募型研修)や将来の経営幹部を早期選抜して育成する次世代経営幹部研修など、経営環境の変化を踏まえた新しいニーズに応じた研修があります。

また、研修の実施形式には、社内の人間を講師に立てて実施する社内講師研修、社外から講師を呼んで実施する外部委託(社外講師)研修、社外で実施されている研修に従業員を参加させる外部派遣研修の3つの種類があります。目的や予算に応じてこれらの種類を使い分けながら実施していきます。

2019年2月28日 公開