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HRの基礎知識

Vol.1そもそも従業員教育ってなに?

これから重要となるHRの役割

HRとは「Human Resources(ヒューマンリソース)」の略称であり、日本語では「人的資源」と訳されます。 同様の意味を持つものとして「人材」という単語があります。 明確に区別されてはいませんが、「人材」が労働者個人にまでフォーカスされるのに対して、「人的資源」という表現は経営的な視点を主としたニュアンスが強くなります。 従業員を、ただ労働力(WorkForce)としてとらえるのではなく、企業が持つ資源(Resource)であるという考えから、この用語が使われています。

また、HR(人的資源)を管理することをHRM「Human Resources Management(ヒューマンリソースマネジメント)」といいます。 この「マネジメント」の部分までを含めてHRという単語を使っているケースも、国内では多いようです。

HRに関する業務は、国内企業では主に人事部が担当します。 ただし、国内企業の人事部は、いまだ管理部門としての役割やイメージも強く、HRという単語に含まれる人的資源の活用・活性・支援といった役割までは担っていないケースが多く見られます。 一方、2012年にHR総合調査研究所が行った調査によると、今後重要になる人事業務の最上位に「人事戦略」と「教育・研修」が僅差で並んでいます。

これからの人事部は、ただヒトの管理をするのではなく、戦略的に教育・研修を行いながら、人的資源のマネジメントに関わっていくことが期待されているということです。

従業員教育を行う目的を明確に持つ

HRのひとつの柱となる従業員教育とは、企業が従業員の能力の向上を目指して行う教育活動全般のことです。 内容や形式はさまざまですが、ほとんどの企業で、何らかの従業員教育が行われています。 経営活動を行っていくうえで、従業員のビジネススキルを高め、仕事の質を高めていくことが欠かせないからです。

従業員教育の最大の目的を明確な言葉で表せば、それは「人材育成」ということになります。 人材育成とは、「企業が抱える人材を、企業にとって有用な人物、必要なスキルをもった人物に育てること」です。企業に必要なスキルには、ビジネス全体を見渡す観察力、問題点を見抜く洞察力、その解決策を見出す問題解決力、業界に関する知識、業務に関する技術や知識など、部署や役職によってさまざまなものがあります。そうしたスキルを、ひとつずつ、または総合的に高めていくことが人材育成なのです。

もちろん、従業員は既にそれぞれある程度の能力をもっていて、各部門の業務を担うビジネスパーソンとして存在しています。 しかし、そこで満足してはいられません。 ビジネスの環境は日々姿を変え、それぞれの作業や業務に求められる知識、スキル、技術もどんどん変わっていきます。 そうした変化に対応できる人材を育てるために、企業にとって従業員の育成は欠かせない課題なのです。

ただし、従業員教育が目指すのは、「人材育成」にはとどまりません。 教育によって従業員一人ひとりの能力が上がり、チーム全体のモチベーションや能力が向上し、生産性のアップへとつながること、つまり「人材を育てることで、業務の質を高めたり効率化を図り、業績や利益を上げること」も目的となります。

いずれにしても、お金を投資して人を育成するのは、最終的には企業の業績に結びつく、貢献するのを期待してのことです。 従業員教育の企画や運営に携わる方(教育担当)は、まずはその目的を認識し、教育企画をする際にも、「この教育は、組織の利益につながるのか?」と、日々原点に立ち返って考えることが求められます。

従業員教育の3つの柱

人材育成の方法は、主に、職場で日常的に行われているOJTを中心に、研修をはじめとしたOFF-JT、従業員の自主性に任せられる自己啓発の3つの柱にまとめられます。

①OJT(On the Job Training)
「仕事を通して、指導する」

職場における能力・技術を身につける基本的な方法。現実の職場において訓練させること。おもに日常業務の中で、仕事に必要な知識や技術、態度などをきめ細かく指導・育成でき、業務に直接かかわる指導のため、実践的。

②OFF-JT(Off the Job Training)
「仕事を離れて、教育・指導する」

知識やスキルを習得するために、職場を離れて学習させること。一般に講師やインストラクターによって行われる研修(集合研修)はこれにあてはまる。集中的、体系的に行えるので、効率的な教育が期待できる。

③自己啓発
「自分で行動し、学習する」

個人の意思で、自発的に知識や技術を習得すること。通信講座の受講やセミナーへの参加など方法は多様で、企業側からセミナー等の情報を流したり学費の負担をするなど、バックアップを行う場合もある。

この3つの柱は、互いに関連し合っています。 例えば、あるスキルを高め、身につけるために、まずOFF-JTでその基礎を集中的につくり、その後はOJTで実践力を高めていく方法をとるなどです。 さらに、個人レベルでの課題に対しては、自己啓発によって不得意な部分を解決するよう促すこともあるでしょう。

3つの柱のどれを中心に置き、他のどの柱で補うべきかなどの方法は、そのときの課題によって決まります。 理想は3つの柱がそれぞれに得意な領域で教育効果をあげ、総合的に人材育成の実を結ぶという形です。 何でもOJTに頼ってしまったり、OFF-JT(研修)で実施したからそのテーマはOKだ、ということではなく、これらがうまく連携できていることが何より重要なのです。 それぞれに長所と短所があるので、バランスをとりながら、目的に応じて使い分けたり、上手に組み合わせたりすることが大切です。

2019年2月28日 公開