◆物価スライドとはどんな制度か

 企業年金や個人年金にない公的年金の大きなメリットは「物価スライド」です。
 物価スライドとは、毎年の物価の変動に合わせて年金受給額が変わっていくしくみのことです。インフレによって物価が上がればこれまでと同じ生活費ではやっていけません。そこで、公的年金では、インフレによる年金額の目減りを防ぐための措置を設けているのです。
 去年100円の品物が値上げして105円になれば、今年は105円なければ去年と同じ品物を買うことはできなくなってしまいます。そのため、公的年金は最初は100円の支給額でも物価が上がればその分支給額も増えるしくみになっています。
 つまり、値上がりして105円必要になれば105円、110円必要になれば110円の年金がもらえるということです。私的年金には、このような制度はありません。
 公的年金制度は5年に1度、財政再計算が行われ、基準となる年金額の基礎数字が改定されます。この年の消費者物価指数を1として、翌年以降の物価変動に合わせて毎年物価スライド率が改定されます。
 たとえば、基準となる年の年金支給額が100円で、翌年1%消費者物価が上がったとすれば物価スライド率は1.01で、年金額は「100円×1.01=101円」となります。新しい物価スライド率は毎年4月から適用されることになっています。
 なお、物価スライドは物価の変動に連動するので、物価が下がったときは物価スライド率もマイナスとなって年金額が減ります。
 近年は、デフレによって毎年のように物価の下落が続いていますので、年金額も減額されるはずでした。
 しかし、年金額を減らすと高齢者の生活を脅かし、景気全体の回復にも悪影響を与えるという理由から、特例的に平成14年まで3年連続で年金額は据え置かれています。

弊社刊「図解でわかる100シリーズ」より

株式会社アイ・イーシー 東京都千代田区飯田橋4-4-15
All Rights Reserved by IEC
本サイトのコンテンツの無断転載を禁止します