◆世代間扶養とはどんなしくみか?
私たちの生命は親から子へ、子から孫へと引き継がれて存続していきます。1人ひとりをみれば、子ども時代を過ごしたのちに大人となって働いて経済社会を支え、それから年老いて現役を引退します。一人前に成人して働いている現役世代は、子どもと親の世代を経済的に支える存在です。
かつては、現役を退いた人は、現役のときの蓄えと子どもの仕送りで老後の生活資金をまかなっていたものです。しかし、個々の経済状況は異なりますので、誰もが同じように十分な老後の蓄えを持ったり、子どもの仕送りを受けられるわけではありませんでした。
そこで、現役世代が稼ぎ出したなかから一部を保険料として徴収し、高齢者に年金として再配分し、一定水準の生活を保障しようというのが、今の公的年金の考え方です。つまり、現役世代全体でその時代の高齢者の生活を支えていこうとするもので、次の世代が前の世代を扶養するという意味で「世代間扶養」と呼ばれています。
世代間扶養の場合、現役世代が納めている保険料は、その時代の高齢者の年金を支給する原資となります。このような方式を「賦課方式」といいます。これに対して、自分自身の受け取る年金原資を保険料で積み立てておくのが「積立方式」です。
現在、賦課方式が問題になっています。少子高齢化の急速な進行により、年金を受給する高齢者が増え、年金原資を提供する現役世代が減っているため、現役世代にかかる保険料負担がどんどん増えているからです。
しかし、積立方式にしても、運用益を超える物価上昇があると物価スライドが行えず、年金の価値が目減りしてしまうという問題があります。公的年金の社会保障的側面で考えれば、完全な積立方式は困難です。今後は、賦課方式の負担を抑制しながら積立方式とのバランスをどう取っていくかが大きな課題となっています。
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