◆開示情報の管理

 企業は秘密情報を守ると同時に、企業情報を積極的に開示し、経営の健全性と透明性を高めるべきだという社会的な要請を抱えています。この2つは、ときとして激しく対立する概念ですが、それぞれの要請に真摯に応えていくことが、コンプライアンス経営の基本であり企業の社会的責任です。

 昨今、日本企業も欧米と同様に株主価値経営の時代となり、適切な情報開示がなければ株主(マーケット)から評価を得られず、国際競争に打ち勝っていくことは困難です。

 株主への企業開示は、これまで会計監査機能の強化による財務諸表や損益計算書などの会計情報の信頼性の向上や、株主総会における審議の充実などが要請されてきましたが、まだまだ十分とはいえません。

 会計情報の信頼性については、今後は連結会計・時価会計という国際会計基準にのっとったものをより正確にこまめに開示していくことが望まれます。そのためのIR担当窓口(投資家情報窓口)の設置も有効です。

 戦略的IR活動とも呼ばれますが、これは会社の財務状況や事業性を「よく見せかける」ことではありません。本質は、いいことも悪いことも早く正しく開示していくことです。

 かつてある大手銀行では、ニューヨーク支店で巨額損失隠しが発覚してから、アメリカの財務当局に開示するまで1か月を要しました。この間に増資も行われ、結局開示の遅れが致命的となりアメリカから追放されてしまったのです。

 また、顧客保護に関するコンプライアンス体制を消費者に発信していくことも重要です。たとえば、顧客情報をどう活用し漏洩対策はどうなっているかというセキュリティポリシー、さらにPL法、環境法やリサイクル法への取り組みなどです。すでに自社のホームページなどで紹介している企業もあります。

 法令を守る体制を築き、その取組みを広く開示し、社会から信頼を得ていくことが、これからの日本企業に求められているのです。

弊社刊「図解でわかる100シリーズ」より

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