◆解雇と退職

 安易に社員を解雇すると会社には法的リスクが発生します。

 裁判所から解雇した従業員名義の仮処分命令の申立書と審問の呼び出し状が送付されることがあります。これは、解雇された社員が裁判で解雇の無効を争う前提で、解雇停止の仮処分を行うケースですが、この仮処分が認められると、賃金の支払い義務が生じます。

 そうならないためにも、社員を解雇するには、労働法や就業規則に照らし合わせ、正当な解雇理由があるかをよく検討する必要があります。判例によると、人員整理をするためには、次の要件を満たす必要があるとされます。

@経営上の必要性……解雇をしなければ会社が存続できない状況にあること

A解雇回避阻止の実施努力……解雇の前に、残業代カット、新規採用の凍結、一時帰休、退職勧告、パート社員の打ち切り、再就職の斡旋など、解雇を回避するための措置と努力を行ったこと

B人選の合理性……年齢、勤続年数など、解雇する人の基準が明確であること。たんに勤務態度がよくない程度では合理性はない

C労働組合との協議……事前に労働組合や従業員に人員整理をする必要性を説明すること

 このように、法的には人員整理は簡単ではないのが実態です。また、次のようなケースでも解雇が制限されるので注意が必要です。

@女子の結婚、出産の休業を理由とする解雇

A産前産後の休業期間、業務上の疾病・負傷による休業期間の解雇

B組合の結成、加入を理由とした解雇

 昨今は成果主義人事が普及し、成績のよくない者は解雇も当然との雰囲気もありますが、たんに成績が悪いだけでは正当な理由とはなりません。万一解雇する場合は、正当な理由を明確に説明できるようにしておくことです。

 もっとも、社員の雇用を守ることは、企業の大事な社会的責任であることも忘れてはいけません。

弊社刊「図解でわかる100シリーズ」より

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