◆部門別コンプライアンス体制・・・・・営業部門

 営業活動を巡る法的リスクは、実に多様です。現在、立法が進められている消費者契約法や訪問販売法、金融商品販売法などの規制も多く存在しています。

 消費者保護は時代の流れであり、今後も関連する法令は強化されると予想できるので、すべての営業担当者が営業活動にかかわる規制などを充分に理解し、商品の内容などの説明責任を果たしていくことが、コンプライアンス経営上は重要です。とはいっても、歩合給など成績やノルマが問われるだけに、コンプライアンスの考えを無視した営業活動を展開している企業も多いのが実態でしょう。
 たとえば、押し付け販売。ある情報機器販売会社の営業は、断られても断られてもしつこく訪問を繰り返し、客から「買うからもう来ないでくれ」と言われるまで強引な訪問を続けていたといいます。本来、このようなケースは客が会社であれば業務妨害、個人であれば迷惑防止法に抵触する違法な行為です。

 このような反社会的な営業は論外ですが、接待や贈答は一般に営業現場に定着しているだけに注意が必要です。よくあるのは官庁の取引担当者に金品や饗応を施すケースです。公務員や政治家へ金品を渡すのは贈賄罪にあたりますが、お歳暮やお中元の範囲であっても、贈っていることが世間に知れれば贈賄や癒着が疑われます。

 接待や贈答は日本の文化という意見もありますが、たとえば税法上は大企業に接待交際費の損金算入は認められていません。もし、商品の優位性や価格競争力があれば、ワイロを贈る必要も接待をする必要もないはずです。
 そして、自由競争を原則とする自由経済のもとでは、接待で顧客を維持するのは早晩行き詰まることとなり、会社の競争力を弱体化させることにつながっています。
 突き詰めると、競争力を持って公正でオープンな営業戦略を立てることが、コンプライアンス経営のポイントとなるでしょう。

弊社刊「図解でわかる100シリーズ」より

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