◆部門別コンプライアンス体制・・・・・人事部門
かつて大企業において人事部は、社内人事を掌握するエリート部門といった性格もありましたが、終身雇用の崩壊、成果主義人事の潮流のなかで、新たな人事制度を考える役割と、社員の労働環境やキャリアをサポートする役割に変容してきています。
社員の労働環境をチェックするという意味で、コンプライアンス経営においてますます重要な部門となってきています。
たとえば、希望退職制度を使って強引に社員に退職を迫り、裁判沙汰に至るケース。悪い労働環境を放置して、労働基準局の調査・勧告が入るケースなどがあとを絶ちません。
とくに最近、問題になっているのは解雇トラブル、長時間労働、セクハラです。
企業リストラの一貫としての解雇が社会問題化して久しくなりますが、社員を解雇する場合には、法令や就業規則に照らして、正当な解雇事由があるかどうかを慎重に判断する必要があります。
判例では企業が解雇回避努力を尽くしたかなど、意外に厳しい基準があります。また、業務上の負傷や妊娠による解雇の禁止などもあり、これらに抵触すると人員整理が泥沼の長期係争に発展する危険が生じます。
また、長時間労働に関しては96年に大手広告代理店社員の自殺が過労死認定され、会社に1億円を超える損害賠償が認められたことから、労働時間管理の適正化がコンプライアンス上重要な課題として浮上しています。
さらに、セクハラに関しては会社が抑止する行動をとらなかったため、会社が損害賠償事件の被告になるというケースが増えています。
このようなリスクを未然に回避するために、人事部は中立的な立場から、社員の労働環境に関する相談を積極的に受ける体制と役割が期待されます。
また、人事部では社員の個人情報を管理しているため、十分なセキュリティ対策を講じるとともに扱いには充分な配慮が必要です。
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