WTO(世界貿易機関)の役割

WTO(世界貿易機関)は、世界規模で貿易摩擦を解消していくために設立された国際機関です。
 世界経済発展の大きな障害となるのは、為替レートの乱高下とともに、関税率の引上げや輸入規制などの保護貿易です。自国の貿易を伸ばすために、各国が競って保護貿易に走ると結局、世界経済に大きなダメージを与えてしまいます。

 世界経済の発展には自由貿易、自国の産業を守るためには保護貿易。この調整を図るために戦後生まれたのがGATT(関税と貿易の一般協定)でした。GATTでは主に各国の輸入規制の撤廃と関税率の引下げを行い成果を上げてきました。しかし、1980年代以降、世界経済の構造は大きく変化、紛争内容も複雑化しました。そこで、制裁措置を強化するため、1996年にGATTはWTOへと衣替えして、貿易紛争の処理と貿易政策の立案を行うことになったのです。WTOの発足で「世界貿易の裁判所」が正式に誕生したのです。

 すでに、多くの貿易紛争がWTOに持ち込まれています。たとえば、アメリカは日本に対して「焼酎とウイスキーの酒税格差問題」、「フィルム市場の規制」、「音楽・映画などの著作権問題」などを提訴。これらは非関税障壁(輸入数量割当や基準・認証制度など、関税以外の方法で実質的な輸入制限を行う方法)と呼ばれており、今後は厳しくチェックされていくと思われます。

 ところで、貿易摩擦というと、日本対アメリカ、日本対ヨーロッパを連想しがちですが、WTOでは先進国がサービスや新たな分野で途上国に市場開放を迫るという図式も目立ってきました。貿易問題は、各国の利益と思惑が相反するとても難しい問題だけに、WTOには公正な立場から紛争を解決する機能が何よりも期待されています。

弊社刊「図解でわかる100シリーズ」より

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