IMF(国際通貨基金)の役割とは

 IMF(国際通貨基金)は国連の1機関で、為替の安定と外貨の供給を通して、世界貿易の拡大を維持することを目的に設立された基金です。国際基軸通貨ドルを中心にした固定相場制の制定とともに設立。それゆえ当初は固定相場制の維持が役割でした。

 固定相場制を定めたといっても、世界のすべての国が守るという保障はありません。自国の通貨レートを切り下げれば、海外で自国の商品の価格が安くなり、貿易が伸びます。同時に海外から輸入される商品は割高になり輸入が減り、国内産業を保護して国際収支の赤字をなくせるからです。しかし、自国の都合だけで通貨を切り下げると、国際経済は大きな混乱に陥ってしまいます。なぜなら、一国が通貨を切り下げて貿易商品の価格を下げると、輸出される国の産業は壊滅的なダメージを受けます。他国も通貨を切り下げざるを得なくなります。こうして通貨の切り下げ競争が世界に波及してしまうからです。

 1929年の世界恐慌のときには、金本位制が崩壊したため各国が通過の切下げ競争を展開、各国経済が混乱を極め、第2次大戦へとつながっていったのです。この痛い反省から固定相場制が生まれ、IMFが設立されたのです。

 今日においては変動相場制に移行し、IMFの役割は変動相場制の健全な発展へと変わっています。具体的には通貨切下げ防止、為替制限の撤廃、国際収支が悪化した国への融資などです。とくに1997年のアジア通貨危機、1998年のロシア危機などでは重要な役割を演じました。しかし、融資を行う際の条件となる金融・財政の引き締め、経済構造改革などのプログラムが受け入れられづらく、IMFへの批判も出ました。

 こうした批判を受けて、現在、先進国を中心にIMF融資体制のあり方が、改めて検討されています。


弊社刊「図解でわかる100シリーズ」より

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