◆内陸の都市 四川省

長江上流に位置し、自治区を除いては青海省に次ぐ面積を有する四川省(省都・成都市)には、近年とみに注目が集まっています。というのも、1994年から工事が着工され2009年の完成を目指す世紀のプロジェクト、三峡ダム建設の舞台がここ四川だからです。

ダム完成の暁には洪水被害解消と世界最大規模の発電量が期待されていますが、一方では歴史的遺産の水没により風光明媚な「三峡下り」の峡谷美が失われるため、「今のうちに」と同地を訪れる人も少なくありません。

日中戦争時に蒋介石・国民党政府の臨時首都が置かれた重慶は、97年3月に四川省から独立し中国第4の直轄市となりましたが、これはダム建設基地としての役割が重要視されているため。重慶の分離により、四川は人口トップの座を山東省に奪われました。

三峡ダム以外にも、「四川」からイメージするキーワードは多々あります。パンダ、三国志、四川料理――。三国時代、劉備は当地に蜀の国を興し、魏・呉と争いました。晋代末期に創建された成都の武候祠は、蜀の丞相・諸葛孔明の祠堂。明代になると主君・劉備の霊廟も併設されましたが、人気は主君を凌駕しているようです。

中国四大料理の1つ四川料理は、唐辛子を存分に利かせたスパイシーさが売り。代表メニューは麻婆豆腐、棒棒鶏、担担麺などで、日本人の味覚に合うものばかりです。

「蜀犬吠日」(四川の犬は太陽を見て吠える)という諺があるほど霧が多い四川ですが、実は「天府之国」(恵み豊かな国)とも称される豊穣の地であることをご存知でしょうか。生産量全国一の農産品が多数あるほか、全国総埋蔵量の44%を占める天然ガス、世界屈指の埋蔵量を誇るチタンなど地下資源にも恵まれています。

四川の豊かさは食文化や資源だけではありません。自然と文化の宝庫でもあります。省内の世界遺産は全国最多の5カ所(重慶含む)。杜甫、李白ら文人が活躍し、著名作家・巴金、郭沫若やケ小平を輩出した地でもあります。

弊社刊「図解でわかる100シリーズ」より

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