◆アカシアの咲く大地 東北三省
東北3省とは、遼寧省(省都・瀋陽)、吉林省(省都・長春)、黒龍江省(省都・ハルビン)の総称です。広い中国のなかでも、この3省に特別な感慨を寄せる日本人が多いのはなぜでしょう。
それは、この地が日本帝国主義が築いた「満州国」の虚栄の歴史と濃密に重なり合っているためかも知れません。多くの中国残留孤児の出身地、旧日本軍731部隊が残忍な人体実験を行った地――戦争の傷跡はいまも癒えてはいません。しかし、この地は大連のアカシア、ハルビンの氷像など、日本人の琴線に触れる美しい自然が心を和ませてくれる地でもあるのです。
<遼寧省>
天然の良港と石炭など豊富な鉱物資源に恵まれていた同省は、帝政ロシアなど常に列強の標的とされてきました。当地に「満州国」の理想を描いた日本も例外ではありません。旧満鉄関連の遺構が数多く残る大連、「二〇三高地」など日露戦争の激戦地・旅順、日中戦争勃発の契機となった柳条湖事件の舞台・瀋陽(旧奉天)は、特に日本と縁の深い街です。が、暗い歴史を抱える一方で明るい話題もあります。
近年「北の香港」を標榜する大連には日本企業の進出が相次いでおり、常駐邦人は3000人を超える勢いとのこと。この街には、ファッション・芸術の先進地ならではの他都市にはない活気と清新さが溢れているように思います。アカシアの見頃は5月。
<吉林省>
長春(旧新京)は「満州国」の国都だった街。いまも日本統治時代の残影が澱のように沈滞している印象を受けます。鴨緑江を隔てた対岸は北朝鮮。最近は、その北朝鮮からの越境者の急増が問題となっています。
<黒龍江省>
冬は零下50度にもなる酷寒の地。冬の風物詩・氷まつりは1月に開催されます。黒龍江を挟んで国境を接するロシアは、毛沢東時代には「共産主義の盟主」として君臨するも、現在は力関係が逆転した感が。国境の街・黒河で中国製品を求めるロシア人の姿が、共産二大国の現状を物語っているようです。
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