◆皇帝権力の巨大モニュメント 故宮
中国を代表する歴史文化遺産・紫禁城こと北京故宮は、封建社会における皇帝権力の強大さを具現化した巨大モニュメントです。
敷地面積約72万平方メートル。世界でも比類のない広大な敷地に整然と配置された宮殿群と庭園は、いずれも伝統的な中国建築の精華を凝縮したものばかり。1410年に明の永楽帝が南京から遷都して建設した宮殿が始まりで、以来、清のラストエンペラー溥儀まで両王朝の歴代皇帝がここに居を構え権勢を誇示してきました。
天安門側から主要建築を見ていくと、まず正門に当たる朱塗りの午門が目に入ります。午門は東西に張り出した部分が翼に喩えられることから、別名「五鳳楼」「雁翅楼」とも呼ばれます。午門中央門は皇帝専用となっており、妃や高官でさえも通行を許されぬ「開かずの門」でした。
午門から先は、白玉石の基台の上に建つ太和殿、中和殿、保和殿、乾清宮、交泰殿、坤寧宮と続いていきます。故宮内部は公の儀式や祝典を行う外朝と皇帝の日常生活の場である内廷に分かれており、太和、中和、保和が外朝、乾清、交泰、坤寧が内廷の代表建築です。
なかでも太和殿の皇帝が座す宝座の豪奢さは言葉も失うほどで、贅を尽くした故宮にあっても別格の神聖かつ高貴な空間であることを如実に示しています。一方、内廷の中心をなす乾清宮は皇帝の寝室兼政務室で、皇帝は27ある寝台から毎夜1つを選んで使用していました。これは暗殺防止のため。あれほどの強権を掌中にした皇帝も、絶えず刺客の魔手に戦々恐々としていたのです。
「故宮」といえば、台北の故宮博物館を想起される人も多いと思いますが、ここには国共内戦で敗走した蒋介石が北京から台湾へ持ち去った大量の宝物が展示されています。目も眩むほどの展示物はどれほどの数と価値があるのか想像も及ばぬほどですが、これとて皇帝コレクションのごく一部。北京故宮の壮大なスケールを改めて痛感することでしょう。
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