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▲オランダにも春がようやくやってきました!
ロンドンの春はバラでしたが、
オランダのはチューリップです。
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▲女王の誕生日の日のアイントホーヘンです。
みんななにをするでもなくビールを飲んでます。
街中どこもかしこも人ばかりです。 |
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4月30日はオランダでは女王誕生日で祝日です。街中がオレンジ一色に染まります。この日は家にあるものは何でも売ってよいことになっており、オランダの街中でフリーマーケットになります。街はビールや揚げ物の出店とフリーマーケット、そしてなぜかDJブースがいたるところにあります。
オランダの王室は国民に人気があります。スキャンダルやゴシップもたまにありますが、イギリスの王室ほどではありません。今年で70歳になる現在の女王のベアトリクスも国民に大きな人気があります。(4月30日の誕生日は、ベアトリクスのものではありません。前の女王のユリアナの誕生日です。)クリスマスにはスピーチをするのですが、これを家族で見るのが恒例行事になっている家庭も多いのです。
そんなベアトリクス女王が去年のクリスマスに、「オランダは異なる宗教・文化のバックグラウンドを持つ人々に対して寛容を失いつつあるのではないか」と憂慮しているという旨のスピーチを行いました。この背景には、近年増加している移民の問題があります。これまではインドネシアからの移民が多かったのですが、最近ではトルコやモロッコからのムスリムが多くなってきています。彼らは1600万人いるオランダの人口のうち、すでに100万人近くに達しています。そして、彼らはなかなかオランダに馴染めなく、社会問題となりつつあります。これに対してベアトリクス女王は「もう少しオランダ人のほうが寛容になろうよ」と言ったわけです。
このマルチカルチャーへの寛容な姿勢をうたったスピーチに対して、自由党(PVV)の党首のヘルト・ウィルダース(Geert Wilders)が噛み付きました。「女王は儀典のみに従事し、政治に口出しをすべきではない」という議事を提案したのです。オランダの自由党というのは反移民政策を提唱する極右政党です。党首のウィルダースは、これまでにもムスリムのスカーフを禁止したり、移民を5年間はストップしたりという過激なマニフェストをだしています。発言もかなり過激です。「ムスリムの文化は、遅れてる」と言ってはばかりません。Retarded(知能の遅れた )だとすら言っているのです。彼のインタビューの後では、石原知事の中国に対する発言が穏健に聞こえるぐらいです。まあ、右傾化した発言をする政治家はオランダに限らずいろいろなところにいるわけですが、このウィルダースはもう極右も極右、大変なことになっているのです。
そして彼は、今年の3月、フィトナ(Fitna)という15分ちょっとの短い映画をインターネット上で発表しました。この映画が大問題となっています。イスラム教とテロリズムを結びつけ、ムスリムを徹底的に批判する内容です。コーランがめくられていき、9/11の映像やスペインでの列車テロなどの悲惨な映像が流されていきます。国内だけでなく、EUや国連、イスラム教国など全世界的に大きな問題となっています。
ウィルダース率いる自由党は2006年の総選挙で9つの議席を獲得し、国会で5番目の党となっています(全体では、10の政党があります)。国会での政治的発言力という点ではまだまだです。オランダ国民の多くに支持された政党というわけではありません。政治的発言力はありませんが、そのショックはかなり大きいものでした。アムステルダムがテロの標的になるのではないかといった心配や、オランダのムスリムたちが暴動を起こすのではないかという不安もありました。また、自分たちが人種(民族)主義的な力に加担してしまっているのではないかという危惧もあります。オランダは第二次世界大戦で、ドイツのナチにさんざんやられてきた歴史がありますから。
この映画がリリースされて以来、多くのビデオがオランダからYouTubeなどの動画配信サイトにアップされています。このような映画がつくられてしまったということや、ウィルダースが選挙で議席を獲得したこと、彼の言動などについて、オランダ人が「ごめんなさい」というビデオを載せているのです。すでに消されてしまったものもありますが、今でも、かなりの量のビデオが載せられています。ビデオは10秒から30秒ほどで、「ごめんなさい。(I'm sorry)」というだけのものがほとんどです。このような市民の運動もあり、オランダ国内ではいまのところムスリムは冷静な対応をしているようです。
移民の問題はいろいろなところで起きています。宗教や考え方、生活習慣などはなかなか変えられません。そう簡単にはメルティング・ポッドにはならないのが現状です。移民に職をとられる人も出てきます。社会不安は当然起こります。この不安を煽って、保守的な右傾化した(右傾化したというよりも極右の)言動は当然出てきます。さらに、移民がどんどん多くなっていくと、マジョリティーとマイノリティーの間だけでなく、マイノリティーの間でも問題は起きてきます。ラターシャ・ハーリンズ事件に象徴されるロス暴動の前の韓国系とアフリカ系の間の摩擦のようなものがいつ起こってしまうとも限りません。
そんなときに一部の過激な言動にのせられることなく、集団で興奮することなく行動できる人がどのくらいいるのかは大きな問題になってきます。オランダでは、女王の移民に対するサポート、首相の女王支持の声明などがすぐに出されたり、一般市民がすぐに冷静に対処したために今のところ大きな混乱はでていません。日本でも移民が問題になってくるのは時間の問題です。一部に過激な意見が出始めたときに、日本がどのような対応がとれるのかはまだ分かりません。オランダの次の選挙で、国民がどのような結論をだすのかは大きな注目です。
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