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第5回:
高齢化社会だからこそ子どもへ
▲ここが僕のオフィスです。
狭そうですが、実は結構広いです。
オランダは窓からの採光や人数などに細かいきまりがあります。それらを満たせない部屋はオフィスとして使えないのです。なので、どこのオフィスも居心地良いのです。
▲オランダの花市場に行ってきました。世界中の花がここに集まり、出荷されていきます。
競りは、コンピューターを使って行われていました。
その日の午後には、パリやロンドンの花屋さんに並びます。
 ひさびさに日本に少し帰ってきました。アメリカ、イギリス、そしてオランダと、まるで食事の美味しくない国ばかりなので、舌の鈍感力がかなりついてきたようです。日本に帰ると何を食べても美味しく感じます。ほんとに。渋谷の109で買い物中の女子中高生が「かぁわぁいぃい〜!」を連発するように、日本では何を食べても「おぃしぃい〜!」を連発してしまいます。食事を美味しく頂く能力がかなり上がったのかもしれません。

 久々に帰って、テレビをつけると、知らないお笑いタレントばかり。しかも、だいたいゲームをしているか何か食べてる。そんななか国会中継がやっていたので、自分の国の総理大臣が何を言うのかを少し観たりしていました。焦点は道路特定財源の暫定税率の延長でした。

 先進国で、道路を作るかどうかに国会の焦点がある国ってはたしてどれだけあるのでしょうか。たぶんないですよ。今、どこの国でも内政の焦点は教育や格差、移民の問題でしょう。少なくとも、アメリカ、イギリスではそうだし、オランダでもそうですよ。

 超高齢化社会を迎える日本は、どうやって国の活力を上げていくかが問題となっています。まあ、いろいろ方法はいくつかあるかもしれませんが、なかなかどれも難しい。たとえば、移民を受け入れて、労働人口を増やすこと。海外の人に来てもらうのです。もちろん、移民を受け入れると様々な社会問題がでてくるでしょう。治安も悪くなるし、日本版ホワイトトラッシュが大量にでてくるでしょう。実際、その予備軍は大量にいるわけです。企業は優秀なエンジニアを海外からとり始めています。彼らや彼らの子どもたちの多くは、はるかにそのへんで鼻をたらしている日本の子どもよりも出世し、重要なポジションに着き、高い給料をもらうのです。彼らにはまったく勝てずに、“日本人”であるということ以外に心のよりどころがない人たちがでてくるのは必至です。
 
 優秀な移民に来てもらうのも簡単じゃない。日本はほとんど日本語しか通じません。日本の会社でどれだけ英語で会議ができるかといえば、ほとんど無理でしょう。その国の言葉でしか会議が開けないところには、なかなか優秀な人は来てくれません。日本語ができる移民というのもかなり限られます。日本語を第2外国語として勉強する人の数も減ってきています。日本語を勉強する大きなインセンティブはもはやマンガやアニメなどですから。

 もちろん、もう経済先進国であり続けるのをあきらめるという選択肢もあります。すでに一人当たりのGDPでは先進国中最下位なわけです。ただ、これはなかなか難しい。いわゆる3C(カラーテレビ、クーラー、車)からはじまって、シャネルやグッチ、テレビで特集される健康食品、ウォシュレットや暖かい便座まで、常にものを消費し豊かさとしてきた日本人にはなかなか難しい。

 天然資源に恵まれているわけではない日本は人材こそが命綱です。明治からの近代化も、大戦後の高度経済成長も優秀な人材の下支えがあったからこそのものです。今、この命綱がかなり怪しい。

ニュースでもしきりにやっているように、学力はどんどん下がっていっています。下り坂を転げ落ちています。世界の“トップスクール”といわれる大学に留学している日本人の数は減っています。逆に、中国やインドの優秀な学生はどんどん世界にでています。このままだと、日本は、おじいちゃんとおばあちゃんと、できの悪い若者だけの国になってしまいます。

道路やダムに使っている場合じゃないですよ。GDPに占める教育費の割合は日本は先進国でもかなり低いものとなっています。福田総理大臣や文部科学省の大臣などは、「子ども一人当たりの教育費にすればそれほど低くない」などと国会で言っていました。ただ、子ども一人が背負っていかないといけない老人の数がどんどん増えるのだからこそ、子どもをしっかりと育てていくことはより重要になってくるわけです。質の良い優秀な若い人たちこそ創っていかないといけないのです。道路やダムにお金を使うのはその後でしょう。

学力が低下している一方で、若者たちは、わりと勉強が好きらしいのです。「勉強はできないけど、嫌いじゃない」のです。これはかなりの救いです。彼らが、「勉強はできないし、嫌い」になってしまったらおしまいです。そうなる前に、教育に多くのイノベーションを生み出していくことが必要です。そのためには、どんどん実験をすれば良い。杉並区立和田中学の試みも大切でしょう。試行錯誤がなくてはイノベーションはなかなか出てきません。もちろん、単純に、お勉強ができる人材を創れば良いというわけではないし、お金をかければ優秀な人材が自然とでてくるわけでもありません。ただし、イノベーションは多様性の中から出てくるのです。子どもの数が少なくなってきている今こそ、チャンスなのです。もう一度「坂の上の雲」を見て、教育の中にイノベーションがでてくる仕組み創りを!



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