第23回: アメリカと肥満
アメリカの街を歩くと、とにかく大きい人が多い。1億800万人が肥満だということも言われています。2億800万人のアメリカの半分以上が肥満なのです。アメリカで美味しいものといえば、肉厚のハンバーガーとコーラに大量のフレンチフライ、ステーキ、ホットドックなどでしょうか。どれもこれもハイ・カロリーです。しかも、どれもそれほど「美味しい!」っていうものではないのですが、癖になるのです。妻の靖子も、コーラを飲み(最近はダイエットですが)、アイスを食べるのがすっかり習慣になっています。ドーナツを買うときには、ダース買いになっています。
もちろん、アメリカ人全員が太っているわけでもありません。ダイエットは常に気になるようです。テレビやラジオではダイエットフードの宣伝がたくさんやっています。州単位でダイエットに取り組んでいるところもあります。全米で一番肥満が多いと言われたアーカンソー州は、州をいくつかの地区に分けて、地区ごとで減量のレースなどをしたりしています。州知事もダイエットに励み、「アーカンソーの州知事のマイク・ハッカビーが100ポンド痩せた!」という記事が大きくでたりもしていました。ノースウェスタン大学には太っている人はそれほどいません。学生たちは“お年頃”の女の子や男の子です。がんばってダイエットもしているでしょう。やればできるのです。
ダイエットのほかには、“オーガニック”というのも流行っています。“オーガニック”なジュースや食事が楽しめるレストランや、健康志向を売りにしたスーパーも結構あります。健康ブームのためか、アメリカの20年後の100歳以上の人口は、人口比で日本よりも多くなるという結果を示しているレポートもあったりします。
健康に気をつけている人は実は多いのです。それでは、何ぜこんなに肥満が問題になってしまうのでしょうか。「甘いもの食べすぎ」、「運動しなさすぎ」、「いつでも何か食べている」というだけではないのです。
アメリカでは経済的に恵まれない人たちが太る傾向があるのです。経済的な状況が大きく食生活を変えているのです。
これは子供の時から始まります。例えば、お金持ちの子達が通う学校では、学食はより健康志向の強い業者が提供しています。これは、できるだけ健康的な食事をさせようとする親たちが高いお金を払っているからです。反対に、あまり裕福ではない子供達が通う学校では、いわゆるファーストフードが提供されているのです。経済的な負担が少ないからです。
自動販売機も同じです。お金持ちの子の学校にある自動販売機では、健康志向の強いジュースがおいてあります。あまり裕福ではない子達の学校では、自動販売機はコーラなどのいわゆるポップがたくさんです。なぜでしょう?お金持ちの子達が通うところでは、できるだけ健康的な飲み物を与えようと、親が学校に寄付をするなどして、自動販売機で売る飲み物をより健康的なものにしようとするのです。ところが、裕福ではない子達が通う学校では、親たちからの寄付はほとんどありません。そのかわり、コカ・コーラなどが食堂に自動販売機を寄付したりしているのです(寄付をすれば、その分税金を払わなくて良く、イメージも上がるためこういった寄付をする大企業は少なくないのです)。しかも、食堂のベンディングマシーンは飲み放題です。そりゃ、子供はコーラ飲みますよ。
家に帰れば、またファーストフードです。経済的に恵まれていない子供たちは母子家庭(もしくは父子家庭)が多いのです。母親は仕事があり、食事をきちんと作る余裕はなかなかありません。その結果、子供は冷凍のピザやらハンバーガーを食べるのです。
健康志向をウリにしたスーパーはわりとあるのですが、それらはどれも高級店なのです。日本で言えば、紀ノ国屋や成城石井といったところでしょうか。経済的に恵まれていなければ健康志向の食品は買えないのです。経済的に恵まれていない家庭は、添加物や脂肪分たっぷりの冷凍食品を買うのです。
こうして、子供のうちから高カロリーのファーストフードで育ってしまうと、大人になってもそうした食事から離れられないのです。ノースウェスタン大学に太った学生が少ないのは、彼らが“お年頃”というだけでなく、裕福な家庭に育った子が多いというのも大きな要因なのです。世界一リッチな国、アメリカでは、裕福な人ほどやせており、貧しい人ほど太りやすいのです。
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