先月に引き続き、新卒の採用について考えます。
新卒採用を見直そう (2)
テーマは、「採用は能力より相性で!」
果たして、企業と個人の相性とは何か?
新卒採用において「能力より相性を重視する」という考え方に違和感のある方は意外と少ないのではないだろうか。というのも、そもそも日本企業の採用は新卒中心で、専攻は問わずという傾向が事務系(文系)に関しては顕著であったからだ。技術系(理系)の場合でも、研究室と特別なつながりがある場合を除き、基礎ができていれば、専攻は問わず採用してきているというのが、一部の大企業を除いた実情ではないかと思う。

しかし、ここで考えなければいけないのは「企業と個人の相性とは何か」ということである。個人と個人の相性を考える場合、お互いが対等の立場で知り合って、初めて相性のよさが判明する。信条や考え方、性格、癖まで、長い時間をかけてお互いに確認してから相性のよさはきまってくるものである。ただ、企業と個人との相似として考える場合の個人と個人の相性は、テニスのペアなど、同じ目的を目指して切磋琢磨、協力しあう仲であろう。

さて、企業はこれまで学生に対して、相性に想いをはせるだけの情報や場を提供してきたであろうか。また学生に相性が悪いことで起こることの問題を理解してもらい、ついては相性を判断するに足る情報を提供する様にお願いしてきたであろうか。

情報や場の提供としてまず考えられるのは、CIや広告で、学生にもわかる形で会社のあり方を伝えるというものである。かつて採用難に直面した重厚長大産業に属する企業が、学生に向けに「柔らかい」企業イメージやメッセージを発信していたことを覚えている方は多いと思う。しかし、これは本来固いものを柔らかいと言う様なもので、あまり効果的であったとは思えない。
次に場であるが、近年、インターンの受け入れが盛んに行われている。インターンは学生の就業疑似体験という意味では純粋によいことだが、企業側がこれを採用の一手段とみなす傾向が年々強まっていることには注意を喚起したい。なぜなら、インターンが売り手市場での青田買いとみなされた瞬間、学生からすれば、インターンでの体験は極めて飾られたものであるという解釈がなされるからである。学生は企業側の意図に対して敏感であり、またしたたかである。本命以外のインターンの就業体験で度胸をつけて、本命の企業で勝負する。その様なことを普通にしているのが現状であろう。
では企業としては何をすればいいのであろうか。筆者の経験では学生と親身に対話する機会を、採用とは離れた場面で多く作るのが最も有効なのではないかと思う。これはかつて一般的であったOB・OGの学校訪問に似ているが、訪問したOB・OGに採用プロセスでの大きな権限と責任を与えず、親身に後輩と話すことに徹する様にすることをお勧めする。今の若手社員は会社を第三者的に見る目をもっている。彼・彼女らに感じたままの会社を学生に直接語ってもらうのである。できれば自分達から学校に出向くのがよいであろう。

ここで、不安になる採用担当の方も多かろう。会社に入りたての若僧に何がわかる、会社の妙なうわさを立てられては大変だと。しかし、その様なことが仮にあるとすれば、それは会社が社員へ、理念の浸透や企業風土の刷り込みを怠った結果であると考えた方がよい。入社さえさせれば人材の確保は終わったと思えた時代は既に終わっている。母校に送り込んだ若手が会社の悪評を立てるような会社は、穴の開いたバケツである。その穴をふさがないことには人材の確保はありえない。

次に学生にも相性の問題を理解してもらい、相性を判断する情報を提供してもらうにはどうするかであるが、まず大切なのは、これから社会に旅立とうとしている若者に対して、企業が親身になるということである。具体的には、単純に「採用は相性と能力」で決まるということを面接で学生に告げて面接を行うことをお勧めする。また相性とは何か、なぜそれが重要かを面接の冒頭で説明することで、学生の意識は随分変わる。学生にとってこの様な説明は新鮮であり、「面接は化かし合いの場」ではなく、「真摯な対話を通じてお互いにとってよい結果をもたらすための場」であるという合意を得るきっかけにもなる。

この時に重要なのは、複数回あるであろう面接の中で、
・どのタイミングでどのようにして相性を確認するか
・またそうは言っても能力はどの程度測る必要があるか
であるが、この点については別の機会に説明する。


次回は、新卒の即戦力化についてです。
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