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変化する幸福感

KNOW-HOW

現代の日本は、成長・拡大の社会から成熟社会に入り、閉塞感が充満する中で、新たなパラダイムシフトが必要になっています。かつての成長・拡大社会では、皆が同じ価値観で、与えられた目標に向かって邁進してきました。

 

ところが成熟社会では、人々の価値観は多様化し、複雑で、変化も激しくなっています。それに伴い、「幸福感」に関して、以下のような現象が生じています。

 

 

①物が充足することで、人々の幸福感が変化している

②世代間による幸福感のギャップが生じている

 

順に考えていきましょう。

 

 

①物が充足することで、人々の幸福感が変化している

 

・「ものの豊かさ」よりも「心の豊かさ」を求める時代

 

お金やものが足りなかった時代は、その欲求が満たされると私たちは幸せでした。日本は、戦後からの高度経済成長・拡大主義によって、物質的には満たされていったのです。

 

しかし、現代は成熟社会に入り、自動車や家電などの工業製品が産業の中心となっていた「工業社会」から、サービスやIT などの情報が中心となる「情報社会」へとシフトしつつあります。すでにものは供給過剰となり、さらに「もの」と「情報」との違いが、新たな課題を生み出し、新しい社会の枠組みや仕組みが必要になってきています。

 

企業では、成熟化による市場の閉塞感を打ち破るために、イノベーションを起こせる、新たな価値観を持った人材を求め始めました。従業員一人ひとりの個性を尊重し、そこから得られる多様な価値観から企業が生き残っていくためのヒントを見つけ出そうというわけです。上意下達に従い、滅私奉公する、いわゆる「会社人間」ではなく、「人としての豊かさ」を重視する傾向が高まっています。

 

私たちも働きづめでお金やものをたくさん所有することよりも、生活の中で家族や地域とのつながりを大事にしたり、自己実現を図ったりすることのほうを優先させるなど、心の豊かさを重視する人が出始めています。

 

 

 

・先進諸国で「幸福度」を政策指標に取り入れる動き

 

こうした人々の価値観の変化は、世界規模で見られます。先進諸国を中心に、「幸福度」を国の政策の指標にしようという動きが世界で活発になっているのは、日本と同様の背景があります。

 

20世紀の時代は、国の先進性の指標は工業化やGDP(国内総生産)で、高度経済成長政策が取られてきました。しかし、その見返りとして、21世紀の時代は、環境汚染、資源の枯渇、貧富の差の拡大、戦争やテロ活動の発生など、持続可能ではない社会に直面しています。

 

そこで、フランスでは2008年に「幸福度測定に関する委員会」を発足させ、英国でも「幸福度指標」の導入を進めています。イタリア、アイルランドでも国レベルで検討されています。

 

国連では、2011年7月に、「幸せの国」として有名なブータン政府の提案を受け、「社会経済開発の達成と測定のために、幸福という観点をよりいっそう取り入れる」ことを国連加盟国に求めた、歴史的とも言える決議が行われました。

 

その結果、2013 年から毎年3月20 日を「国際幸福デー」と定め、2012 年より加盟各国の幸福度を調査した「世界幸福度報告書」を発表しています。幸福への機運が世界規模で高まっているのです。

 

 

 

 

 

 

 

②世代間による幸福感のギャップが生じている

 

 いま、成長社会を生き抜いてきた大人たちと、成熟社会で育ってきた若者たちとの間に、「幸福感」のジェネレーションギャップが生じています。

 

日本は少子高齢化、成熟社会に入り、生産年齢人口の減少、高齢者人口の増加と、経済が縮小してしまうおそれがあります。この状況を「危機的」ととらえ、「競争力を強化しろ」、「成長戦略を考えろ」、「イノベーションを起こせ」、こうはっぱをかけている会社経営者や管理職は多いことでしょう。

 

しかし、こうした成長・拡大志向の価値観に対して、経済の低成長が当たり前の成熟社会で育ってきたいまの若い世代には、多くの人に違和感があります。

 

それは、勝負や挑戦を拒む軟弱な若者が増えているわけではなく、いまの若い世代は、成熟社会で得られる幸福感はお金やものではなく、喜びや悲しみなどをシェアできる心の豊かさにあることを肌感覚で知っているからです。

 

特に、2011 年3 月の東北大震災以降、自分のことよりも他人の幸福を願ってボランティア活動などに勤しむ、利他的な若者が増えています。

 

成熟社会に入ったいま、成長社会の価値観をいくら押し付けても、そこに幸福感を見い出せない人たちを動かすことは難しく、それこそ生産性は上がりません。

 

シンプルに言うと、成長社会では「成功すること」が「幸せ」でしたが、成熟社会では、「幸せになること」が「成功」につながります。これからの若者とともに社会をつくり上げていくためには、こうした新たなパラダイムへシフトすることが求められているのです。

 

 

 

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