彼女がだんだんいじめの対象になっていったのです。いじめているのは白人女性で、見るからにいじめっ子キャラです。ある日、いじめっ子の1人のジェード・グッディーというイギリス人のタレントと喧嘩になりました。そこで、「インディアン」と呼んだり、「木の上で生活してるのか」、「なまりのない英語がしゃべれないのか」、「スラムに帰れ」などと言ったり、人種差別的な暴言がシルパに向かって吐かれたのです。これは大きな問題となりました。インドでは、番組プロデューサーの人形が燃やされました。インドを訪れていた次期首相と目されているゴードン・ブラウンが謝罪したわけです。
番組制作会社は「問題の発言は、人種差別からではなくて、社会的、文化的な衝突だ」というコメントを出しています。確かに、個人的に気に食わない人がたまたまインド人であり、人種差別的な発言がでてしまったような気がします。「坊主憎くけりゃ袈裟まで憎い」という感じでしょうか。
人種差別的な発言とその放送自体はいまだに大きな波紋を呼んでいます。日本でこんな人種差別的な発言があれば即刻番組打ち切りかもしれません。ただ、多くの抗議と苦情がくる一方で、番組は無事に最終回を迎え、視聴率は18%を超えました。
日本のテレビ番組と比べ、イギリスのテレビはかなり“現実的”です。例えば、嘔吐物や汚物、血、死体の映像も個人が特定できるほどではないものの、そのままでてきます。日本ではほとんど写されることのない映像です。人体についてのドキュメンタリーでは、死体の解剖の様子がそのまま流されますし、受精についてのドキュメンタリーでは、実際に全裸の男女が出てきて、体位の説明をしたりします。
人種や階級、障害、同性愛者などをネタにしたコメディーもあります。BBC(日本で言えばNHKです)が作っているリトル・ブリテンというコメディー番組なのですが、最高に下品で、強烈に差別的な笑いが入っていますが、国民的な人気を博しました(日本でもDVDが発売されているようです)。人種や階級の差があったり、障害者がいたり、同性愛者がいたり、それら全てを含んだイギリスを自虐的に笑う感じのもので、ドリフターズの「8時だヨ!全員集合」に匹敵するほどの人気です。
人種などの差別を助長するかどうかは大きなポイントになっています。例えば、イギリスではサッカーはやはり一番人気のスポーツです。ベッカムやルーニーなどは国民的スターです。プレミアシップの試合があるときには必ず中継がありますし、大きな視聴率を稼いでいます。そこで、より臨場感を出すために、審判にピンマイクをつけたり、ピッチの近くの音を拾ったりしたのです。そこで問題となったのが、選手たちの罵りあいです。子どもたちのスターであるプレーヤーが差別的な言葉を使っていたり、罵りあいをしていたりでは、差別を助長したり、教育上良くないということで、この企画は日の目を見ることはありませんでした。
差別的な発言が番組に含まれていたとしても、それが差別を助長する目的あるいは、そのような効果がない場合に限りOKというのがポイントです。実際に、いろいろな差別はあるでしょう。差別的な言葉は日常に溢れています。それら全てに蓋をしてしまっては“現実的”ではなくなってしまうわけです。“現実”を伝えるというよりも、できるだけ視聴者に見やすい形、視聴者が喜ぶような内容に加工していく日本の番組とは大きく違います。
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