第19回:テストと成績インフレ
テスト期間がやってきました。4月末からおよそ2ヶ月ぐらい続きます。アメリカや日本の大学では、多くの場合、テストは学期ごとに行われるのが普通ですが、イギリスの大学では、一年の最後に一発勝負です。全ての授業のテストがいっぺんにやってきます。図書館は24時間営業でいつも満員。コピー機の前には長い列です。今月は日本とは少し違うアメリカやイギリスでのテストについてお届けしたいと思います。

アメリカ、イギリスでのテストのパターンは大きく2つです。1つは、筆記試験です。試験には何でも持ち込んでよいものから、一切持込が許可されないものまでいろいろです。

全て持込可能なテストの場合には、スーツケースに本、パソコン、サンドウィッチなど持ち込んでいる学生すらいます。一番シンプルなテストのスタイルですが、大変なテストです。まず、2時間書き続けないといけません。また、日本の試験の多くは、鉛筆やシャープペンですが、アメリカやイギリスでは全てボールペンです。鉛筆だと、消せてしまうので、クレームが来たときなどに困るので、試験には全てボールペンなのです。これは結構きついのです。とくに英語がネイティブではない学生にとってはかなり厳しいです。これは採点側にもきついのです。とにかく、欧米人のハンドライティングは読みにくいのです。なかには、ヒエログリフに書かれているものと大差ないものもあります。芸術的過ぎて、判読が不可能なものもあります。ですので、筆記試験はだんだん少なくなってきています。最近では、ITの進歩によりパソコンを使うものも増えてきました。課題が配られ、生徒はどんどん打ち込んでいきます。プリントアウトのボタンを押すと、教壇のところにあるプリンターからどんどんプリントアウトされていきます。生徒は最後にこれにサインをして終わりです。

もう1つはテイク・ホーム・エグザムです。かなり多いパターンです。これは宿題形式の試験です。例えば、午前9時に課題が配られ、その日の午後の2時に提出といったものや、翌日の12時までに提出などという感じです。アメリカで多いテストの方式です。アメリカではみんな大学の周りに住んでいます。課題の図書は、図書館で複数30分以上借りられないようになっています。図書館に行っても良いですし、自分の家でインターネットで調べながらやっても良いのです。いわば、何でもありの試験のバトルロワイヤルです。

成績はこれらのテストと短い論文などで決められることが多いのですが、最近、アメリカやイギリスの大学で成績のインフレが起きているのです。ここ15年ぐらいでアメリカ、イギリスでの大学生の成績は上がり続けています。しかも、それは学生が優秀になってきているというよりも、成績をつけるのが甘くなってきているかららしいのです。

大学は多くの学生に集まってもらわなければビジネスになりません。そのため、大学のランキングというのは多いに気になるところです。大学のランキングというのはビジネス・ウィークやファイナンシャル・タイムズなどといったジャーナリストが行うことが多いのですが、そのなかに必ずといっていいほど、学生の満足度が項目として入っているのです。成績が悪いと奨学金はとれませんし、卒業も難しくなります。満足して卒業してもらうために、だんだんと成績が甘くなってきているのです。

また、アメリカやイギリスでは学生からの先生の評価は、先生の昇進などに大きく影響します。このことも影響しています。

一般的に、「日本の大学は入るのは難しいけれど、卒業は簡単」と言われ、「欧米の大学は入るのは簡単だけど、卒業は難しい」と言われてきました。最近では、日本では少子化の影響で「入るのも、出るのも簡単」に、欧米では成績のインフレで「入るのも、出るのも簡単」になってきているのかもしれません。ただ、やはりテスト期間は学生にとっては大変なビックイベントです。6月末まであと2ヶ月ぐらい、図書館はあせった学生で一杯になるのです。
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